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被爆3世を撮る(3)なぜ平和教育は陳腐化するのか

益田美樹 フリーライター、ジャーナリスト

聞いた側の「当事者性」こそ

 ――家族内での戦争体験の継承。その現状をどう見ていますか。

 「相対的に見れば、家族内で戦争が話題になることは、少なくなっているでしょう。戦争体験者の高齢化が一番の要因です。例えば、エージェント(戦争の話を聞かせてくれた相手)について、京都教育大の村上登司文教授は、東京と京都、広島、那覇の中学生2年生を対象に調査を実施したことがあります。どんな結果になったか。祖父母(曾祖父母)からの割合が、那覇は他地域で比べて高い。2016年時点で40%ぐらいでした」

拡大カメラマン堂畝紘子さんの写真。写真展「生きて、繋いで ―被爆三世の家族写真―」から。被爆者やその孫世代も収まっている

 沖縄でも家族から直接聞く割合は減ってきた。高校2年生を対象にした2020年のアンケートでは、沖縄戦について話してくれる家族や親族がいないと答えた生徒は52.2%に達した。半数超えは初めてだったという。広島の調査でも、「原爆が投下された時の様子を誰から聞いたか」という問いに対し、「家族」の割合は減少が著しい。調査開始の1968年には63.7%だったのに、2011年は31.4%にまで減った。

 「ただし、割合が減っているとはいえ、家族間では、父や母、祖父母、曾祖父母というつながりの中で、体験を聞いた子や孫に当事者性が立ち上がることがある。それが今、体験の継承という問題では、とても大事な要素になっているんですね。逆に言うと、学校の平和教育が陳腐化・形骸化している現状があるわけです。子どもたちにとっての平和教育が『また同じ話を聞くのか』みたいになっている。気持ちの悪いものは見たくない、『自分とは関係ないもの』にしたいという気持ちが強くなっています」

 「かつては教師自身が被爆者という切実さの中で、授業を組み立てていました。だから、切実さを、授業の中でも再現し得た。現在は状況が違います。だからこそ、家族が持っている戦争体験の意味は大きい。家族の話だから、人の心を動かす可能性も高いと言えるでしょう」

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筆者

益田美樹

益田美樹(ますだ・みき) フリーライター、ジャーナリスト

英国カーディフ大学大学院修士課程修了(ジャーナリズム・スタディーズ)。元読売新聞社会部記者。著書に『義肢装具士になるには』(ぺりかん社)など。フロントラインプレス(Frontline Press)所属。