「はりぼて」に支配された国/調査報道×コメディーで描く政治・市民・メディアの正体
8.16公開!富山市議会の不正を暴いたドキュメンタリー映画監督の秘めた思い
五百旗頭幸男 ドキュメンタリー映画監督
先日、メディア各社の取材を受けていた際、ある女性ライターがつぶやいた一言がひっかかっている。
「記者会見って事前に質問を渡しておいて、台本を読み上げるのが普通なのに、この映画の会見はすべてガチンコだから驚きました」
絶句した。
記者会見は本来、記者が取材対象者と向き合う真剣勝負の場だ。ガチンコが普通で、質問者と答弁者に台本がある方が異常だ。すぐに「認識が間違っている」と伝えた。
彼女は安倍首相や菅官房長官の記者会見を想起したそうだ。異常な状況に長く慣らされると、市民の中で異常が正常へと変わっていく。しかも、無自覚なままに……
その怖さを、温和なライターの何気ない一言によって突き付けられた。
富山の腐敗議会は日本の縮図
富山市議会で起きた議員14人の辞職ドミノとその後4年間を描いたドキュメンタリー映画「はりぼて」を制作した。8月16日から全国で順次公開される。
この映画は、2016年に制作した番組「はりぼて~腐敗議会と記者たちの攻防~」の続編にあたる。当時、自民党1強体制の富山市議会では、政務活動費の不正取得が横行。国内最小規模の民放局、チューリップテレビの記者たちがその不正を追及し、議会と当局の「はりぼて」を浮き彫りにした。
あれから4年。市議会には「日本一厳しい」政務活動費のルールが導入された。「議会改革の成果だ」と胸を張る議員たち。だが、4年前と同様の不正が発覚しても、毅然として、誰も職を辞さなくなった。
映画が活写するのは、議会と当局の姿だけではない。それらを許し、受け入れてきた市民とメディアを含む4年間の実相。ひいては、この国の縮図だ。