2020年08月21日
8月16日、なでしこリーグ2部第5節が埼玉の「NACK5スタジアム」で行われ、来秋開幕する女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」への参戦を表明している「ちふれASエルフェン埼玉」(ちふれ)が「ニッパツ横浜FCシーガルズ」(ニッパツ)と対戦し、スコアレスドローで引き分けた。
Jリーグ同様、新型コロナウイルス感染拡大防止策で、スタジアムへの入場制限がされているため、この日の観客は285人。しかし後半残り6分、おなじみのアフロヘアのストライカーが交代すると、両チームのファンたちからひときわ大きな拍手が沸き起こった。ちふれの荒川恵理子(40)は、17歳下のFWと交代しピッチに駆け出した。
スタンドのファンからは「(53歳の)カズは本当にすごい。でも、がんちゃん(荒川のニックネーム)もすごい。この暑さの中で走るんだから」と、19時を回っても30度を下らず、湿度も60%超という悪条件下で、抜群のキレ味を見せるベテランを称賛する声も。この日ゴールは奪えなかったが、9日の「オルカ鴨川FC」戦では、後半79分に交代すると4分後にゴールを決め(試合は2-2)、40歳284日のリーグ最年長ゴール記録を樹立。2年前に作った38歳363日の最年長ゴールを自ら更新し、24年目のシーズン序盤5試合で勢いに乗っている。
Jリーグでは13年ぶりにJ1復帰を果たした横浜FCでカズ、三浦知良が最年長記録の更新を続けている。高温が続く8月に入って、5日には(ルヴァン杯鳥栖戦)先発して60分出場し、連戦となる1週間後の12日(同札幌戦)も先発し、自らの最年長出場記録を塗り替えた。カズに比べれば報道されていないが、最年長ゴールを奪う女子サッカー界のレジェンドに、枯れない秘密を改めて聞いてみたくなる。
サッカー日本女子代表が、「なでしこジャパン」と呼ばれ、親しまれるきっかけとなった試合がある。2004年アテネ五輪出場枠をかけたアジア最終予選の北朝鮮との一戦だ。1996年アトランタ五輪から正式種目となり、日本は、アトランタに出場したものの次のシドニー五輪出場は逸し、もし2大会連続で五輪に出場できなければ、女子チームの解散に歯止めがかからない。まさに「崖っぷち」に立っていた。
当時24歳の荒川は魂のこもったプレーで、9年間勝てなかった北朝鮮から先制ゴールを奪うと、チームもアテネ五輪出場権を獲得。この試合の盛り上がりをきっかけに、日本サッカー協会の当時会長だった川淵三郎氏ら関係者が「女子チームに愛称を付けて親しんでもらおう」と、「なでしこ」と命名した。
自らのゴールで時代を突破してきたストライカーは、近年ケガに苦しみ出場機会を失った。昨季終了後には、引退を含めて、今後のキャリアについて色々と考えただろう。これからは若手をけん引する仕事も求められる。
「年齢については考えたことがないんですね。12歳で、(ベレーザの下部組織)メニーナに入ってサッカーで上を目指して以来、なぜかずっと14歳で止まっている感じなんです。私にとって年齢はただ数字が並んでいるだけで。30歳を超えたらガクッと来た、など体験談は聞いていましたが、疲労が抜けない、といった感覚もあまりなく、このところ続いていたケガさえまさに功名というか、いい方に作用してくれたような気がします」と笑う。
一昨年、太もも裏の付け根付近が慢性的に痛み、思いきり走る動作ができなくなったという。そのうえに
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