難民を追い詰めかねない法改正が進む日本の実態~映画「ファヒム」から考える
家族との別れ、送還リスクにさらされる生活。日本にも多くの「ファヒム」たちが……
石川えり 認定NPO法人難民支援協会代表理事
8月14日に封切られた「ファヒム」は、バングラデシュの親子がフランスに難民として逃れ、様々な困難に直面する過程を描いた、実話に基づく映画だ。「母国に強制送還されれば、この子の命が危ない」。ファヒムの父親が何度か語るこの言葉が印象に残る。
ストーリーは以下の通りだ。
バングラデシュの8歳の少年ファヒムは、国内のチェス大会で優勝するなど頭角を現していたが、父親が反政府デモに参加したことから政府当局による迫害の危険を感じるようになり、父と共にフランスへ逃れる。しかし、難民申請は不認定となり、親子はホームレスに。生きるために路上で物を売っていた父親が警察に逮捕され、国外退去に向けての手続きが着々と進む中、ファヒムはチェスの全国大会に出場する――。
難民申請者の厳しい状況をリアルに描く
映画では、日本の状況ともつながる難民申請者が抱える困難が数多く出てくる。祖国での暴力、家族との別れ、フランスへの到着後あっという間に尽きるお金とホームレス生活、嘘をつく通訳に象徴される不公正な難民申請手続き……。
「常に堪え難い不安を抱え続けている」と監督が表現した、難民申請者の厳しい状況がリアルに描かれていた。
難民として認められなかったファヒム親子は難民申請者用のシェルターを退去し、路上生活を余儀なくされる。「不法滞在のムスリム」と言われながらもフランスに滞在し続けたのは、強制送還によりバングラデシュへ送り返されれば、親子は拘束され引き離され、とりわけファヒムの命が危険にさらされるからだ。
難民として保護を求めても認められず、命の危険がある故郷への送還の恐怖に直面する。フランスよりもさらに難民認定が厳しい日本でも、まさにこのような事態が起きている。
昨年のフランスでの難民認定は約3万人、日本はなんと44人だった。多くが難民として認められない厳しい状況のもと、彼らをさらに追い詰めかねない法改正が、現在進められている。本稿ではあまり知られていないその概要をお伝えしたい。

映画「ファヒム」の一場面