大島堅一(おおしま・けんいち) 龍谷大学政策学部教授 原子力市民委員会座長
1967年福井県生まれ。環境経済学、環境・エネルギー政策論専攻。高崎経済大学、立命館大学を経て現職。東日本大震災直後の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員、コスト等検証委員会委員など。『原発のコスト』(岩波書店、大佛次郎論壇賞受賞)、『地域分散型エネルギー』(日本評論社、共編著)などがある。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
放射性物質で汚染された土壌が国民の知らぬまま利用可能となる危険
東京電力福島第一原発の事故で、敷地外の土壌が広範囲に汚染された。
放射性物質で汚染された土壌を剥ぎ取ることを「除染」という。環境省は、除染で剝ぎ取って袋に詰めた土(除去土壌)を、袋から出して利用する 計画を進めている。
環境省は、除去土壌をそのまま使うのではなく、汚染されていないきれいな土で覆土して利用するとしてきた。これまでは園芸作物・資源作物で使用するとしており、筆者は注目していたところであった。
そこにきて、2020年5月1日に行われた記者会見で、小泉進次郎環境大臣が、飯舘村長泥地区での実証事業で「これまで行ってきた花や資源作物の栽培に加えて、震災前に住民が栽培していた食用作物の試験栽培も実施する予定であります」と記者会見で言っているのを目にすることになった。
この件に関する詳細な情報は、環境省ホームページに存在していなかった。具体的な内容を知るべく、筆者は行政文書の開示請求を行った。
そこで分かったのは、環境省が、覆土した状態で野菜を育てるだけでなく、覆土無しでもキャベツとインゲンを栽培する実証事業を行うということだった。
このことは一般には知られていなかったため、筆者が入手した資料を基礎に、2020年8月8日、共同通信がこの事実を報じることになった。また、NHKや朝日新聞、河北新報、東京新聞も覆土無し栽培のことを伝えた。