大島堅一(おおしま・けんいち) 龍谷大学政策学部教授 原子力市民委員会座長
1967年福井県生まれ。環境経済学、環境・エネルギー政策論専攻。高崎経済大学、立命館大学を経て現職。東日本大震災直後の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員、コスト等検証委員会委員など。『原発のコスト』(岩波書店、大佛次郎論壇賞受賞)、『地域分散型エネルギー』(日本評論社、共編著)などがある。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
放射性物質で汚染された土壌が国民の知らぬまま利用可能となる危険
飯舘村長泥地区は、福島原発事故後に設定された帰還困難区域にある。
ここでは、汚染しているため剝ぎ取った土「除去土壌」を「再生利用」するための実証事業が行われている。「実証事業」は、物事を実現させるために安全性を確認するための実験と言ったほうがわかりやすいかもしれない。
「除去土壌」も紛らわしい言葉である。
「除去土壌」とは、福島県で実施した除染作業で剥ぎ取ったもので、放射性物質で汚染されている土のことである。新聞やテレビでは、「除染土」または「汚染土」と言われることもある。
今回の食用作物の栽培は、「除去土壌」の「再生利用」の一環である。今まで、環境省は、「除去土壌」の再生利用を、食用作物栽培を覆土無しで実際に進めると公の場で詳しく説明したことはなかった。
環境省が進める「除去土壌」の「再生利用」とは一体何か。
東電福島原発事故によって広い地域で放射性物質による汚染が広がった。放射性物質で土地が汚染されると、放射性物質だけを土地から取り除くことはできない。そこで、土壌から汚染された土壌を剥ぎ取り、運び出す作業が国によって進められた。
これが除染である。
土壌を剥ぎ取るのだから、当然、大量の「除去土壌」が発生する。「除去土壌」の量は、福島県内で1400万立方メートルに及ぶ。これを全て最終処分しなければならないとすれば、量が多すぎる、と国は考えた。
そこで、これをできるだけ少なくしようというのが「再生利用」の目的である。
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