生い立ち、薬物依存症について発信。ツイッター配信のドラマにも出演。いま何を思う
2020年09月13日
2016年6月、俳優、タレントとして活躍し、俳優の高島礼子さんと結婚、その後芸能界を引退していた高知東生さん(55)がテレビのニュースに登場したのは、覚醒剤取締法違反などによる逮捕だった。
あれから4年。高知さんは自身の生い立ちや薬物依存症のことを積極的に発信している。最近は、ツイッターで配信されるドラマにも出演した。仕事も家族も失った後、何があったのか。現在の生活や芸能界復帰などへの思いも聞いた。
1964年、高知県出身。2016年に覚醒剤取締法違反(所持・使用)などの罪で懲役2年執行猶予4年の判決を受けた。今年3月に厚生労働省主催の啓発イベントに清原和博さんらとともに登壇。「ギャンブル依存症問題を考える会」が5月からツイッターで配信したドラマで、ギャンブル依存症の夫の役を演じた。9月4日に自叙伝「生き直す 私は一人ではない」(青志社)が発売された。
――覚醒剤で逮捕され、有罪判決を受けました。
振り返ると、俺にとっての最大のピンチは、お袋が死んだ時でした。高校3年生で、突然、お金のことや生活のことを自分でやらなければいけなくなった。思えばあれが「最初の最大の危機」でしたね。
――複雑な家庭事情だったことも、公表しています。
もともと「母親はいない」と言われ、祖母に育てられました。ところが突然、小学校5年生の時に「この人が母親だ」と。一緒に住むことになりました。お袋は任侠(にん・きょう)の世界と関係ある「姐(あね)さん」みたいな人だったので、和服を着たり、派手なバッグやアクセサリーを持っていたり。家にはほとんどいなくて、俺は大嫌いだった。逃げるように、全寮制の中高一貫校に入りました。
――「大嫌いな母親」であっても、亡くなった時の喪失感が大きかったのですね。
生んでおいて、いつまでも女でいたがるような母親のことが、ずっと許せなかった。ところが、亡くなる半年前、突然学校にやってきた母が、変わっていたんです。ジャージー姿で、俺の入っている野球部のために、他の親と一緒に差し入れを作って。複雑な気持ちだったけど、うれしさもあった。
――お母さんが変わってくれた、と感じたんですね。
どんな心境の変化だったかは、今となっては分かりません。3年生の夏には3日間帰省して、一緒に過ごしました。
家は心なしか殺風景で、派手なものもなくなっているように感じました。お袋はカセットデッキを持ってきて、俺に「無縁坂」を歌って欲しいって言うんです。録音したいって。恥ずかしいからやだよ、いやいや歌ってなんて押し問答の後、歌ったら音程はおかしいし、リズムも変だし。それで2人で大笑いしたんです。2人で共同作業みたいなことをしたのも、声を上げて笑い合うのも、初めての体験でした。
次の日は買い物に行くと、「腕組んでいい?」って。長年かけて塊みたいになっていた母への怒りや恨みが、解けていくような感覚がありました。
――それが最後の思い出になってしまったのでしょうか。
寮に戻ってから数日後、突然お袋がやってきたんです。「大学に入って欲しい」「任侠だけは絶対にだめだ」って。俺はまさかお袋がそんなこと考えているなんて思わなかった。「今日中に決めてくれ」って言うもんで、「就職するよ」って伝えたら、うれしそうになって。
別れ際に車から降りようとしたら、「あたし、キレイかな」って言うんです。俺は「バカ言ってんじゃねーよ」って。振り返ると、お袋は笑いながら涙を流して、手を振ってた。その2時間後に、母は自死しました。
――「バカ言ってんじゃねーよ」が最後の言葉だったんですね。
今でも引きずっています。あの時、「キレイだよ」と言ったら生きていたかもしれない。大嫌いだった母親への恨みがようやく解けたと思えた時になんで、という思いもずっとあります。当時はただ啞然(あぜん)として、現実だと思えなかった。
お袋の死に涙を流せたのは、40を過ぎてからです。あの時の孤独感。突然一人になったというあの感覚。忘れられません、「生きている意味があるのか」と思いました。
――2回目の「最大の危機」が逮捕されたことでしょうか。
逮捕されたことそのものというよりも、その後がつらかった。自業自得ですが、裁判で執行猶予をもらって、それから2年ぐらいが地獄のような毎日でした。マスコミからバッシングされ、友達や仲間だと思っていた人たちも離れていきました。当たり前のことです。俺だって逆の立場だったら、そうしたかもしれない。
自分の裏切りで家族も失った。経営していた店を整理したり、スタッフの再就職先を探したり。あちこちに頭を下げにも行きました。必死でいろいろなことを終えた時、待っていたのが孤独でした。
――俳優復帰を考えていたのですか?
まったく頭になかった。でも、生活はしなければいけない。中には「うちで働けよ」って手をさしのべてくれる人もいたけど
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