安藤キャスターバッシングが見失っているもの
「炎天下中継」めぐりネット炎上~現場報道の意義に着目を
小田博士 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

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フジテレビ系情報番組「直撃LIVE グッディ!」の炎天下でのレポートをめぐり、中継続行を促した安藤優子MC(メインキャスター)の対応が「パワハラ」だとして、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめとするインターネット上で批判が殺到し、大炎上状態となった。バッシングの中には、「危険性を伴う炎天下でのレポートは不要」といった現場中継不要論まで相次いでいるが、報道や取材活動の意義に着目した指摘はほとんど見当たらない。人格攻撃をはじめとした一方的なバッシングは、メディアリテラシーの重要性を再認識させることにもつながっている。報道に携わった経験もふまえ、問題提起したい。
「もう一回、お返ししていいですか」
レポーター あとはですね。何だっけな。すみません。ちょっとですね、暑すぎて頭がボケっとしているんですね。ごめんなさい。(中継を)お返ししておきますね。
安藤優子MC えぇ。(中継を)返しちゃうの? 私、返されたのね。私、返されたのね。
レポーター (伝えたい内容を)準備していたんです。あと3つあるんですよ。
安藤MC もう一回、お返ししていいですか。
レポーター 返しちゃいますよね。そうですよね。
高橋克実MC ちょっと休憩したほうがいいんじゃないですか。
レポーター ちょっと暑くてですね……。対策としては日焼け止めをしております……。
8月19日に放送された「グッディ!」では、炎天下の最中の観光地の状況が中継された。女性のレポーター(ディレクター)は、渡月橋などがある京都市の嵐山エリアの観光客らが、日焼け止めを塗ったり、凍らせたキュウリをペットボトルに入れて持ち運んだりして対策していることを伝えた。その後、中継では上記のようなやり取りがあり、消化不良のまま打ち切られた。
レポーターが示した手元の温度計は40.1度だった。地元紙・京都新聞の20日付朝刊記事によると、京都市中京区では19日に最高気温38.3度を観測したとされる。京都市消防局に24日午後に問い合わせたところ、「今夏は10~20人程度が連日、熱中症で救急搬送されているが、死者は現在まで確認されていない」(総務課)という。

酷暑の夏。京都駅前のバス乗り場などには「京(みやこ)の駅ミスト」と名付けたドライ型ミスト装置が設置され、ヒートアイランド対策がとられていた=8月19日、筆者撮影