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安藤キャスターバッシングが見失っているもの

「炎天下中継」めぐりネット炎上~現場報道の意義に着目を

小田博士 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

リスクと便益のトレードオフ

 筆者は偶然、中継が行われた19日午後2時過ぎ、夏休みを利用して京都市内を観光していた。なので、現地の酷暑ぶりは骨身に染みて分かっているつもりだ。湿気が多くジメっとしたむし暑さだった。ハンドタオルで額を拭っても、汗がすぐに噴き出てくる。同行した妻はグロッキーになった。歩き回るのは難しそうだったので、観光を中断して数時間休んだ。

拡大清水寺周辺。世界遺産の名所でも観光客はまばらだった=8月18日、筆者撮影

 リスク管理は一般に「リスクと便益のトレードオフ」の関係にあるとされる。筆者の場合、観光地を巡る便益をあきらめることで、妻の体調回復を優先した。観光はあくまでも余暇の一環であり、しなくても困らないからである。

 一方、今回の現場中継は、番組名が「直撃LIVE」と銘打っていることからも分かる通り、報道を目的としている。それを途中で打ち切るということは、レポーターの安全性を確保した一方で、酷暑地の京都がどのような状況かを視聴者に伝えきることをあきらめたことを意味している。

「パワハラ」「サイコパス」……批判の大合唱

 中継シーンをめぐっては、MCの高橋克実さんらが休むよう促したのに対し、同じくMCの安藤キャスターが笑いながら中継続行を促した。

 「パワハラ」「鬼」「サイコパス」「人として失格」……。当該ニュースについてのコメント欄やSNS上では、安藤キャスターを厳しく批判するコメントで溢れ返った。

 安藤キャスターの笑っていた対応は、適切ではないだろう。一方、中継続行の要請に関しては、報道現場に身を置いた感覚からすれば、一方的に断罪すべきものとは思えない。というのは、中継映像を見る限り、女性ディレクターは喋る内容を忘れてはいるものの、一定の受け答えをしていた。熱中症のリスクを避ける努力は必要だろうが、「死ぬかもしれない」などというほど極めて切迫した状況とは見受けられなかった。

「現場の取材態勢」こそが問題

 レポーターにとって、中継は当日の最大の業務だったはずである。少なくとも片手間の仕事ではない。このような中継では事前にリハーサルするのが通例であるが、レポーターは事前の取材活動も含め、炎天下の中にずっといたのかもしれない。

 ただ、リハーサルを早めに済ませて、事前に日陰で休むなど体調を整えてから本番に臨むこともできたのではないか。暑くてボーっとしがちであるならば、話す内容の要点をメモにしておくこともできたはずである。

 問題は現場の態勢にあり、現場の様子を詳細に把握できないであろうスタジオの安藤キャスターに一切の責めを負わせるのは酷ではないだろうか。

拡大8月は全国的に猛暑が続く。東京駅付近では、炎天下をマスク姿の人々が行きかうなか、「逃げ水」が見られた=8月7日

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筆者

小田博士

小田博士(おだ・ひろし) 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

1975年1月生まれ。神奈川県大和市出身。上智大学経済学部経営学科卒業後、産経新聞社に入社。整理部を振り出しに千葉総局(県警、県政)、社会部(文部科学省、司法)、政治部(官邸、与党、野党、防衛省など)で記者生活16年。国政、地方行政、選挙や教育問題をはじめ様々なジャンルを取材した。記者の経験を活かして郷土の発展に尽くしたいと政治家に転じ、2015年4月に大和市議会議員に初当選。現在2期目(自民党)。

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