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敵・味方を峻別する安倍政治にからめとられたメディアの見るに堪えない姿

安倍政治に敗北したメディア(上)責任は保守系とリベラル系メディアの双方にある

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

特定のメディアに偏った首相のインタビュー

 報道各社が首相とサシで会見できるというのは、見方によれば民主的である。しかし、これはなかなかの曲者(くせもの)だ。単独会見の相手(新聞社、放送局)と時期を設定するのは、首相や首相官邸の判断になるからだ。

 別の言い方をすれば、「官邸官僚」と呼ばれる首相補佐官らが、時期を見計らいながら調整し、首相の思いを大きくアピールできることになる。実に巧みなメディア戦略であるとともに、メディアの分断にもひと役買うこととなった。

 たとえば、安倍首相は読売新聞との単独インタビューで憲法をテーマに縦横に語り、同紙2013年4月16日朝刊で「憲法96条をまず見直そう」と訴えた。96条の先行改正は憲法改正のハードルを下げるものだが、読売はこの日、1面と4面を使ってインタビュー概要を伝えた。

 翌17日朝刊では政治面で連載「憲法考 改正の論点」をはじめ、社説では全面的に安倍首相の考えを支持した。このように読売は2日間にわたって、改憲をめぐり、たいへんインパクトの強い紙面をつくったわけだ。

 この単独会見方式は、恣意的ではあるものの当初は新聞、放送各社ともに均等に回していた。しかし、この原則はほどなく崩れ、首相と近いメディアにインタビューの機会が偏った。過度のメディア選別のはじまりで、その結果、報道機関が分断され、亀裂が走ることとなった。

拡大日本テレビ系の情報番組「スッキリ!!」でインタビューを受ける安倍首相(2013年4月18日放送分)から

「NEWS23」で語気を強めた安倍首相

 安倍首相は、報道への介入ともとれる発言をしばしばおこなった。

 「多弱」の野党を不意打ちするかのように衆院解散を表明した2014年11月18日夜のことだ。首相はTBS系「NEWS23」に生出演し、リラックスした表情で岸井成格アンカーらの質問に答えていた。

 ところが、番組途中で街頭インタビューがVTRで流され、安倍政権の経済政策について否定的な意見や感想が語られると、首相はにわかに気色ばみ、「おかしいじゃないですか」と岸井氏らを問い詰めた。VTRにはアベノミクスに肯定的な声が入っていたにもかかわらず、安倍首相は偏向報道といわんばかりに語気を強めたのである。

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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