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安倍政権の権力を監視できなかったメディア 問われる「権力と報道の距離」

安倍政治に敗北したメディア(下)安倍政治のメディア操作で分断された末に起きたこと

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

賭けマージャン事件で語るべきことは

 今年5月、黒川弘務・前東京高検検事長は新型コロナウイルスが感染拡大するなか、新聞記者らと賭けマージャンをし、それが発覚したことで辞職した。黒川氏は安倍政権による脱法的な法解釈変更で、定年延長していた。

 内閣法制局長官、日銀総裁、NHK会長など、安倍政権は独立性がきわめて重んじられる要所の人事を恣意(しい)的に行なってきた。黒川氏の定年延長も、検察ナンバーワンである検事総長への布石といわれ、「官邸の守護神」と揶揄された。

拡大東京高検の黒川弘務検事長=2020年5月21日、東京都目黒区

 検事長が、コロナ禍による緊急事態のなか、賭けマージャンに興じるのは言語道断だ。黒川氏のお相手を常習的にしていた産経新聞の社会部記者2人と朝日新聞の元司法担当記者は、どうなのか。

 両紙とも「極めて不適切な行為」とし、産経は記者2人を取材部門から、朝日は元記者を役職からはずしたうえで、それぞれ停職1カ月とした。おわび記事(いずれも2020年5月22日朝刊)をみると、産経は「取材対象に肉薄することは記者の重要な活動」として自社記者をかばうかのような記事を書いた。

 しかし、ここで語るべきは、「権力と報道の距離」の問題ではないか。これについて、両紙のおわび記事ではほとんど触れられていない。権力と距離を保つことは、報道倫理の最重要事項のひとつである。

 問題は、産経は取材対象に肉薄し、特ダネや独自ダネを書いたのか、ということだ。黒川氏が検事長時代に指揮をとった総合型リゾート(IR)の汚職報道は、自民党議員(現在は離党)の逮捕者もでたが、読売新聞がリードしていた。

 最前線の記者の苦労はわかる。「きれい事ではすまされない」という声も聞こえる。しかし、理想と現実の狭間で闘うことも、記者の役割ではないか。

安倍政権の「メディア選別」は常套手段

 ここで「権力と報道の距離」について、あらためて考えたい。

 読売は昨年末から年始にかけて、IR汚職報道で確かに精彩を放った。一方で、権力との距離の近さもしばしば指摘されてきた。第2次安倍政権発足後のきわめつけは、憲法施行70周年にあたる2017年、安倍首相に単独インタビューして憲法改正について縦横に語らせ、憲法記念日の5月3日に特大記事を載せたことだ。

 改憲という国家の根幹をなす重要テーマは、オープンな場で記者会見し、多様な質問を受けるのが、まっとうな対応だろう。その後、野党議員が衆院予算委で安倍首相に改憲発言の真意をただすと、「自民党総裁としての考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい」と安倍首相は答えた。

 国会で説明を求められ、「新聞を読んでくれ」とは、前代未聞の答弁である。安倍首相(権力)と読売新聞(報道)の距離が厳しく問われる場面であった。

 慶応大学教授の鈴木秀美氏(憲法、メディア法)は、

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

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