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プロ野球とJリーグの観客増は、五輪の呼び水になるか

増島みどり スポーツライター

プロ野球開幕後、初めて観客を入れて試合を開催した京セラドーム大阪=2020年7月10日午後、大阪市西区、金居達朗撮影

スポーツ対コロナの長期戦で前進、観客5000人上限から2万人へ

 9月8日午前、NPB(日本野球機構)とJリーグは連名で、西村康稔・経済再生担当大臣宛てに、観客数の段階的な増加を求める要望書をメールで発出した(後に文書郵送)。

 内容は、5月下旬に定められた大規模イベントでの上限5000人としてきた人数制限を、上限2万人、または競技場の収容人数の50%と段階的に増員する新たな緩和策を求めるもの。収容人数によっては、一気に4倍の2万人と上げずに、あくまでもクラブ、自治体サイドでの裁量で2万人まで、とする。合わせてサッカーのアウェー観戦者受け入れについては、「同時には難しい。まず人数を増やし、その後アウェー観戦を検討する」(村井チェアマン)との方針だ。

 要望書では、中間基準としての2万人でスタートしていく方向で①経済と感染症予防の両輪を回していく②プロ野球、Jリーグ両方が再開、観客を入れた7月10日以降、詳細なガイドラインが徹底し、ともに感染拡大につながる大規模なクラスターなどはファンの間でも発生していない③来年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、安心、安全な観戦環境を実現し五輪に貢献する、といった3つの論点が示されているという。

 政府は新型コロナウイルス感染症対策を話し合う11日の分科会で、早ければ19日に大型イベントの開催制限を段階的に解除する方向性を固めており、両プロスポーツはこの先陣を切る形で、観客の増員をスタートする見込みだ。プロ野球は6月19日、JリーグはJ2、J3は6月27日、J1は7月4日と、日本を代表するプロスポーツが始動し約3カ月が経過したが、5000人では球団、クラブとも経済的には厳しい状態のまま、またファンにも5000人の壁は閉塞感となっていた時期だけに、4倍になる増員が様々なジャンルでカンフル剤として期待される。

 西村大臣からの回答期限はないが、チケット販売が間に合えば、9月下旬には、一部「プレミア化」していたチケット入手が手の届く形に前進しそうだ。

選手、クラブ・球団関係者、自治体、そしてファン一体で作った新たな観戦の成果

 開幕、再開から、両リーグと感染症学の専門家が合同で立ち上げた「新型コロナウイルス対策連絡会議」は9月7日で実に15回を数え、両スポーツとも数十ページにも及ぶ詳細な「ガイドライン」を作成。選手は、保健所の追跡に即座に対応するため自身の行動履歴を日々記録し、観客もこれに沿った行動で協力する。専門家は、2週に1度の会議に出席するだけではなく、試合直後の移動や宿泊、施設での集団生活を伴うプロ競技の特性にも対応する。球団、クラブのある地域に感染症学のアドバイザーを配置し、選手の疑問にもホットラインで即時回答するなど、きめ細かな態勢を敷いて、未知のウイルスとの戦いに臨んできた。

 7日の会議後の会見(オンライン)で、連絡会議の賀来満夫座長(東北医科薬科大学医学部特任教授)は「ピークが落ち着きつつある今、プロ野球、Jリーグ、そして観客も一緒になってここまで努力をしてきた大規模イベントの在り方をさらに高めて、チャレンジしていくことはとても重要だ」と話す。また同会議の三鴨廣繁・愛知医科大教授は、政府が設けた上限5000人について、「科学的な根拠はそれほどない数字」と前提したうえで、「プロ野球、Jリーグは国内のスポーツの運営の手本になっている。そしてこのガイドラインが来年のオリンピック、パラリンピックにつながると確信している」と、競技場の収容人員のパーセンテージで観客を決めるのが根拠に基づく現実的な施策とした。

 政府見解の根拠が明確ではなかったにもかかわらず上限5000人を守り、

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