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官邸記者クラブで20年前に起きた「指南書事件」が問いかけるもの

森喜朗首相の「神の国発言」釈明会見の水面下で何があったのか

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

首相に会見の対応法を伝授 「指南書」全文

 今回、記者会見を行うことによって、「党首討論はやらなかったが、森総理は、この問題で逃げていない」という印象を与えることはできると思います。ただ、今回の会見は大変、リスキーで、これまでと同じ説明に終始していると、結局、民放も含め各マスコミとも、「森首相“神の国発言”撤回せず 弁明に終始」といった見出しを付けられることは、間違いないと思ってください。官邸クラブの雰囲気をみますと、朝日新聞は「この問題で、森内閣を潰す」という明確な方針のもと、徹底して攻めることを宣言していますし、他の各マスコミとも依然として「この際、徹底的に叩くしかない」という雰囲気です。
 「間違ったことは言っていないし、これまでの国会答弁などとの整合性を考えると、発言の撤回はできない」という意見は、よく判ります。また官房長官も昨日、会見で「撤回は考えていない」と言っているので、官房長官発言との整合性もあるでしょう。しかし、会見する以上、総理の口から「撤回」と言わないまでも、「事実上の撤回」とマスコミが報道するような発言が、必要だと思います。そうすれば、マスコミも野党もこの問題をこれまでのような調子で追及することはできなくなります。その場合、「なぜ、これまでの発言と変えたのか?」と質問されると思いますが、その時は、「真意を分かってもらえば、誤解は溶(ママ)けると思ってきたが、その後も現実に、多くの方に誤解を与え、迷惑をかけたので」と言えばよいと思います。
 「事実上の撤回」と受け取ってもらうための言い方ですが、「私の発言全体を聞いてもらえば、決して間違ったことを言っているのではないことは理解してもらえると思ってきたが、一部、発言に舌足らずのところがあり、現実に、多くの方に誤解を与え、また迷惑をかけたことは事実だ。従って、発言全体の趣旨について撤回するつもりはないが、『日本は天皇を中心にしている神の国である』と発言した部分については、取り消したい」などと冒頭で言明した上で、(公明党の)神崎代表が言っているように、国民主権と信教の自由を堅持することを明確に説明すればいいと思います。いすれにしろ、こうした発言は、冒頭で明確に言った方がよいと思います。また、こうした方針の転換をするのであれば、事前に官房長官と幹事長に了解していてもらうことが不可欠だと思います。公明党から直ちに歓迎の声をあげてもらうことも必要です。
 会見では、準備した言い回しを、決して変えてはいけないと思います。色々な角度から追及されると思いますが、繰り返しで切り抜け、決して余計なことは言わずに、質問をはぐらかす言い方で切り抜けるしかありません。先日、総理自身が言っておられたように、ストレートな受け答えは禁物です。それと、朝日などが騒いだとしても、くれぐれも時間オーバーをしないことです。冒頭発言も短くし、いつくか(ママ)質問を受け付けて、25分という所定の時間がきたら、役人に強引に打ち切らせるようにしないと、墓穴を掘ることになりかねません。(近藤広報官にそれが出来るかどうか心配ですが)総理就任の会見の際も、最初は好評だったのに、予定をオーバーした際の質問に、総理が丁寧に答えていた部分が、逆に大変、不評でした。くれぐれも、会見を長くしないよう、肝に銘じておいて下さい。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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