記者よ、権力に飼い慣らされるな。半沢直樹のごとく菅政権に立ち向かえ
安倍政治の「毒」によって麻痺していった言論を再生することが必要だ
徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)
2822日におよぶ歴代最長の安倍晋三政権が終幕、新たに菅義偉首相が選ばれ、自民、公明両党による連立内閣が9月16日に発足した。
第2次安倍政権以降、官房長官を務めた菅新首相は安倍政治の「継承と前進」を掲げた。内閣も、麻生太郎副総裁兼財務相ら8人の閣僚を再任、閣僚ポストの横滑りや再入閣組も多く、「安倍亜流内閣」「暫定政権」といったふうに映る。

初閣議を終え、天皇陛下から任命を受ける菅義偉首相(前列中央)ら=2020年9月16日午後10時16分、首相官邸
政治、社会、メディアを分断した安倍政治
そもそも安倍政治とはどのようなものだったのか? 一言でいって、それは世の中を敵と味方に峻別(しゅんべつ)する分断対決型の政治である。衆院選、参院選に5連勝したことで得た「数の力」をテコに、安倍政権は対決型の手法を前面に打ち出し、数々の重要法案を強行突破で成立させた。
こうした異論を排除する政治手法は、政治の世界だけではなく国民をも分断し、社会に深い亀裂を生んだ。メディアも例外ではない。政権側の巧みなメディア戦略によって、ジャーナリズムの要諦(ようてい)であるはずの権力監視の機能は切り崩され、分断されたメディアは本来果たすべきつとめを果たせなかった。
菅新政権のもとで同じ轍を踏むことは許されない。菅新政権の発足に際し、安倍政治の「毒」によって麻痺していった言論を再生することが必要だろう。そのために、メディアはどう対応していけばいいかを考えてみたい。