2020年09月21日
9月14日、女性指導者限定の最上位資格として新設された「Associate-Pro(A-pro)ライセンス」(Aプロ)のコーチ養成講習会が、今年6月に完成した高円宮記念JFA夢フィールド(千葉市美浜区)で始まった(終了は21年5月)。同ライセンスは、来秋開幕する女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」で監督を務めるのに必要な資格となる。コロナウイルス感染拡大防止のために、初日はメディアに公開されなかったが、事前審査で受講を認められた初代受講者13人中、2人の感想が、日本サッカー協会を通じて発表された。
河本菜穂子(49=モンゴルの15歳、18歳以下女子代表監督)は、「スタッフの方々、受講生の人たちとすでに何日も一緒にいたような錯覚をするくらい充実した一日でした」とコメント(抜粋)。初日の講座から収穫が多かったようだ。
また、ジェフユナイテッド市原・千葉で18歳以下の監督を務める三上尚子(39)は、「次世代を引っ張るリーダーの育成という考えのもと、来年スタートするWEリーグでの監督もそうですが、選手にとって選択肢を増やしてあげられる指導者に成長できれば」(抜粋)と、今回の5日間の集中講座に意欲を見せた。
初日に田嶋幸三・日本サッカー協会会長、反町康治・技術委員長らが参加したのは、女性の最上位となるライセンスと受講者への大きな期待感の表れだ。
田嶋会長は、アメリカの女子選手の割合が全体の40%に達し、ドイツでも30%となる世界情勢を例にあげ、「日本も100万人の20%を目標に本気で取り組んでいます。JFAも本気で女子サッカーをバックアップします。本気で女子サッカーを盛り上げていきましょう」と、本気を全コメント中7度も使って「本気度」に思いを託した。ちなみに現在の日本の女子競技人口は、全体の5.6%でしかない。
来秋、女子初のプロサッカーリーグが誕生するにあたって、女性でプロを指導できる資格者をどう位置付け、増やしていくか。この問題が、これまでの壁に風穴を開け、新たな制度を設置するきっかけとなった。
今井純子・女子委員長は、W杯を制した後、女子限定のプロライセンス新設より、男子と同じ最高位S級に「女性がチャレンジしやすい環境を整備するべき」と考え、女性指導者が取得しやすくなるよう、職場、クラブ、所属協会などの理解を求める支援してきた。今回、プロ発足に伴って「この機運を逃すべきではない。女性指導者の背中をもっと強く押してあげられる制度を作る絶好機」と、積極的に制度新設に舵を切った格好だ。
日本サッカー協会指導者ライセンスは、ピラミッド型の底辺からD級、C級、B級、A級と上がり、Jリーグの監督を務めるには最上位となるS級の資格が必要となる。今回は、この山型の外に、S級に準じる女子のための資格を設け、将来的には、S級への移行も可能とする予定だ。これによってS級の取得者も増加を見込む。
S級ライセンスは、Jリーグが始まって以降、すでに500人近い資格者を輩出した。一方、そのうち女子のS級取得者は、女性で初めてチャレンジした本田美登里(55=現在、なでしこリーグ3部の静岡SSUアスレジーナ監督)以降、現なでしこジャパン・高倉麻子監督(52)らわずか8人。全体の1.6%でしかない。女子の問題ではなく、協会、周囲の施策の不備がこの数字の要因だ。
背景には、S級取得のためにかかる時間が1年と長く、合宿や海外研修といった難しいスケジュールがある。たとえ意欲があっても、
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