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[45]「自立支援」の時代の終焉を迎えて

住居確保給付金から普遍的な家賃補助へ

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

社協の貸付制度と住居確保給付金の申請は急増

 その一方で、今年3月から拡充され、全国の社会福祉協議会(社協)が窓口となって受け付けている「緊急小口資金」と「総合支援資金」という2種類の貸付プログラムの利用件数は、この間、急増している。

 感染拡大の影響で減収となった人に最大20万円を特例で貸し付ける「緊急小口資金」は、これまで約70万件が決定され、失業や減収した人に生活資金(単身月15万円以内、2人以上世帯月20万円以内)を原則3カ月まで貸し付ける「総合支援資金」は約33万件が決定された。

 これらの貸付制度の申請期限は、当初、9月末までに設定されていたが、厚生労働省は先日、12月末までの延長を決めた。予算は予備費から3142億円を充てる予定だという。

 また、今春以降、収入が減少している人に賃貸住宅の家賃を支給する住居確保給付金(給付金)の申請件数も急増している。今年4 月から7月までの全国の給付金の申請件数は、計96,285件(決定件数は計82,393件)にのぼっている。

 厚労省は、社協の貸付制度と住居確保給付金に関する相談を無料で受け付けるコールセンターをそれぞれ設置している。厚労省のホームページを開いても、これらの2つの制度が大きく宣伝されており、政府がこの2つの制度をコロナ禍における貧困対策の主軸に据えていることがよくわかる。

拡大厚生労働省のホームページのバナー

 私たちが今春以降、生活保護制度に関する広報の強化を厚労省に要望した結果、同省は先日、ホームページ上で公開している「生活を支えるための支援のご案内」と題したリーフレットの生活保護に関する説明に、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずに自治体までご相談ください」という文言を追加した。

 このこと自体は前向きに評価できるが、ホームページ上の社協の貸付制度や住居確保給付金の扱いに比べると、厚労省が生活保護の広報に消極的なのは一目瞭然である。

 そうした政府の姿勢が生活保護の申請件数にも影響しているのであろう。

 私は、これまで政府に対して貧困対策の強化を要望する際、生活保護の積極的活用と同時に、生活保護の手前のセーフティネット(特に住宅支援)の強化を訴えるという二正面作戦を採ってきた。

 コロナ禍における政府の貧困対策は、前者については落第点だが、後者については一定、評価できると捉えている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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