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「記者クラブ」10の問題〈1〉情報へのアクセス特権〈2〉メディアの談合〈3〉権力への同調

総括「記者クラブ」~権力とメディアの歪んだ関係(1)

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

問題点1 情報への特権的アクセス権

 記者クラブ制度の問題点については、筆者も論座で何度か繰り返してきた。既出の『官邸記者クラブで20年前に起きた「指南書事件」が問いかけるもの』『権力との癒着の温床「記者クラブ」の「開放」その先にある「廃止」』などがそれに該当する。

 問題点1は、記者クラブ記者だけが享受できる「特権的アクセス権」の問題だ。

 記者クラブに加盟できるのは、昔も今も原則、日本新聞協会や日本民間放送連盟などに加盟するメディア企業の所属記者である。大手や有力なマスメディアの会社員・職員に限られている。そうした組織の記者であれば、入社1年目でも政治担当記者として官房長官会見などに出席できる。

 マスコミの総本山・日本新聞協会は記者クラブに関する2002年に出した「見解」(2006年に改訂)で、フリーの記者らにも門戸を開放すべきだと示している。見解を出した時期も相当遅いうえに、その後の記者クラブ制度にも大きな変化はない。

 「見解」から20年近く。この間は端的に言えば、「言うだけ」であり、同協会には見解の実現に向けたリーダーシップが全く見えていない。

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 ニュース専門ネット局「ビデオニュース・ドットコム」を主宰するフリージャーナリストの神保哲生氏は、こうした閉鎖性の問題点を「マスコミによる情報への特権的なアクセス権」と表現する。

 この問題で筆者は、神保氏、それにフリージャーナリスト青木理氏の3人で鼎談したことがある。詳細は拙著『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』産学社)に所収されている。刊行から8年経つが、問題の所在や神保氏ら3人の見解は変わっていない。

 鼎談の中で青木氏は、記者クラブで常駐を続けていると当局者が記者に何度も”ご説明”を行うなど、まさに洗脳が行われていると語っている。それを受けて、神保氏は次のように指摘した。「情報への特権的アクセス権」を端的に解説する内容だ。

 洗脳は本人に自覚がない。自覚があったら洗脳じゃない。その洗脳も含めて記者クラブ問題の本質は、あれが「特権的アクセス」だということです。
 要するに、自分たちは優先的に情報にアクセスできる。洗脳されるほど日常的に情報源にアクセスできるのも、特権的アクセスの一断面なんです。「当局者の言い分を信じ込まされている」という意味で青木さんは洗脳という言葉を使ったんだろうけれど、結局、「記者が特権的な立場を失い得る状態にある」ということこそが、特権的アクセスの問題点だと思います。
 失う恐れがあるから、失わないように行動する。いいですか? つまり、「情報をいつでも取れる立場にいる」という状態が特権的であって、それに反した行為をすれば、情報へのアクセス権を失いかねません。現在の旧メディアと権力の関係はそんな状態になっている。そこにこそ、日本のメディア問題の核心はあるわけです。

 神保氏の指摘はさらにこう続く。

 ジャーナリストとして正常に機能するためには、本当は「最低限必要なものが保証されている」だけでいい。それが本来のジャーナリズムの考え方なんですね。例えば、記者会見でどんな質問をしてもいい、その後は書いても書かなくても情報をどう料理してもいい。でも、最低限、記者会見に出て質問ができるような権利と仕組みはジャーナリストなら誰にでもある。それが「ミニマムアクセス」の考え方です。
 だから、一番外側にいるメディアであってもフリージャーナリストであっても、ミニマムアクセスが担保されてなければなりません。それが担保されていれば、大手マスコミの記者が権力者に近寄って取った情報が偏っていても、外野メディアはそれを批判したり書いたりすることができる。相対化されるわけです。それが本来の姿だと思います。

 記者クラブは、東京の中央省庁にだけ存在するのではない。都道府県の津々浦々、実に多くの記者クラブが存在する。上智大学文学部新聞学科の元教授・橋場義之氏によると、同氏が毎日新聞メディア面の編集長だった2001年8月、全国に散らばる自社の記者を通じて調べたところ、暫定集計でも676の記者クラブがあったという。

 北海道新聞記者だった筆者の経験で言えば、新人時代に勤務した小樽市でも「市政記者クラブ」「警察記者クラブ」「教育記者クラブ」「海事記者クラブ」などが存在した。人口15万人少々の地方都市でさえ、こんな状態だ。

 日本新聞協会の直近データによると、日本には約1万7千人の記者がいる(回答93社の合計)。そのうち2~3割が校閲記者やレイアウト担当の整理記者などの「内勤」だったとしても、1万人強の記者はほぼすべてが記者クラブに所属し、取材活動を続けている。

 重要なので、繰り返したい。新人時代から大半の外勤記者は、常時、どこかの記者クラブに所属して取材を続けているのだ。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

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