総務省の努力を台無しにする菅政権の人気取り
2020年10月01日
安倍前総理大臣の政策を継承するという形で誕生した菅総理大臣。菅総理大臣が今後の選挙に備えて打ち上げた、いくつかの政策のうちの1つが「携帯料金の値下げ」である。
はっきりいって国民の人気取り政策以外の何物でもない。それどころか、これまでの総務省の努力を台無しにする政策であり、かつ今後の日本社会にとって発展の遅れにつながりかねない、危うい政策である。
まず、現在の日本の携帯料金は決して高くない。
高いと勘違いしてしまうのは、多くの人がドコモ、au、ソフトバンクのいわゆる「三大キャリア」を使い続けているからである。
もし彼らがMVNO、いわゆる格安SIMと呼ばれる事業者のサービスに移行すれば、携帯料金が高いと感じられることはほとんど無くなるだろう。実際、僕も数年前からMVNOを利用している。
音声通話ありで、パケット量は3GB契約で、税込みで1800円程度。2年縛りも無し。通話に関してはこちらから電話をかけることはほとんど無いので、かけ放題プランは不要。SIMの差し替えとか開通手続きは自分でやる必要があるが、手順は簡単なものなので、日常的にスマホを使う人にとって難しいことはない。
通信に関しては、12時台(お昼休み)と18時台(帰宅時間)に利用者が増えるために通信速度が遅くなるが、それ以外の欠点は見当たらない。
「携帯電話での通話が多い」「会社のお昼休みに携帯で動画を見て過ごす」という人には合わないが、それ以外の大半の人にとっては、三大キャリアとMVNOの価格差を考えればMVNOの方が満足度が高いはずだ。
しかしなかなかMVNOへの移行は進まない。
やはり多くの人たちが携帯端末と通信回線のセット販売や2年縛り、家族とのシェアといった、とても複雑な料金体系を当たり前のもの、仕方のないものとして認識してしまっている。
また、かつては道行く人に「インターネット無料」などといいながらルーターを手渡し、強引に回線契約にこぎ着けるようなことがあったり、今でも電話でいまいち要領を得ない勧誘電話がかかってきたりすることがあり、MVNO業者に対して訝しむ人も少なくない。
やはり、テレビや新聞、雑誌などに大量に宣伝を打ち、実績もある三大キャリアだけが、安全安心な通信業者と認識するのも致し方ないと言えよう。
実は、三大キャリアによる寡占を打破し、携帯市場に競争原理を働かせようとして、ずっと動いていたのが総務省である。
総務省は長きにわたり、大手キャリアの寡占状態にある携帯業界に、真っ当な競争原理を導入するため、携帯端末と回線のセット販売を否定し、
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