メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

レジェンドたちがコロナ禍のスポーツ界から発信した力強いメッセージ

増島みどり スポーツライター

53歳現役の理由は、足ではなく手を使うシーンに

 試合中カズが足ではなく手を使う場面が、53歳が今も現役を続けている理由が隠れている。サッカーなのに「手」とはおかしな話だが。

 川崎戦、0-2で折り返した後半3分、横浜FC小林友希が中村俊輔からのCKにヘディングでゴールを奪う。この時、カズは、喜ぶ若手に目もくれずゴールに転がるボールを真っ先に奪いに行った。ボールを右胸にしっかり抱きしめるように、センターサークルへダッシュし、リスタートを促すようにボールを置く。1点では追いついていない。喜ぶのはその後だ。早く再開してもう1点取るぞ。これらを言葉ではなく背中で示す。

 この日はキャプテンマークを巻いていたが、そうでなくても、日本代表戦でも、どんなに苦しい試合でも、大きくリードしていても、カズは必ずゴールからボールを胸に抱いて運んでくる。45歳の最年長出場記録を持っていた中山雅史と2人がFWでピッチに立っていると、2人が同時にゴールに駆け込みボールを奪い合ってぶつかっていた。「もう1点」とは、FWの魂とも呼べるような貪欲さの象徴で、ゴール後のこのパフォーマンスが、かつて得点のたびに酔いしれた派手な「ダンス」よりも力強く、魅力的だ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

増島みどりの記事

もっと見る