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[46]「家なき人」に住民が声かけする街

コロナ禍で進む「路上脱却」の背景とは?

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

収入が減った路上生活者、『ビッグイシュー』の通信販売は好調

 今年は、アメリカのシンシナティを舞台に「大寒波が襲来した日の夜に路上生活者が図書館に立てこもる」というストーリーの映画『パブリック 図書館の奇跡』(エミリオ・エステベス監督)が話題になったが、荒天時に図書館が路上生活者の避難場所になるのは万国共通である。その図書館が一時、閉館したことの影響は大きかった。

 また仕事の面では、路上生活者が多く従事するアルミ缶集めの仕事は、アルミスクラップの輸出が減った影響で、買い取り価格が下落した。建築・土木の仕事も一時期、工事現場が止まったため、普段以上に収入が減った路上生活者が多かった。

 路上生活者の仕事作りのために発行されている『ビッグイシュー日本版』(450円の販売価格のうち、230円が販売者の収入となる)の路上販売も、テレワークへの移行の影響により、ビジネス街を中心に売り上げが大きく減少した。

 発行元の有限会社ビッグイシュー日本では、急遽、販売者である路上生活者を支援するため、「コロナ緊急3ヶ月通信販売」と銘打って、通常は実施していない通信販売に乗り出した。

 幸い、通信販売は好調で、4~6月の第1次には約9500人、7~9月の第2次にも約5000人の参加があった(現在は第3次募集中)。この通信販売の売り上げをもとに、ビッグイシュー日本では販売者に販売継続協力金として現金給付(4~6月は毎月5万円、7~9月は毎月3万円)をおこなった。

 厚生労働省が2016年に実施した「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」では、路上生活者のうち、仕事をしている人の平均収入は、約 3.8 万円であった。

 路上生活者の多くは、もともと極度の貧困状態にあるわけだが、コロナ禍はそこに追い打ちをかけたのである。

 また、各地で実施されている支援団体による炊き出しも、緊急事態宣言中は一部が一時休止になっていた。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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