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[46]「家なき人」に住民が声かけする街

コロナ禍で進む「路上脱却」の背景とは?

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

路上生活者を支援する市民の動きは活発に

 だが、『ビッグイシュー日本版』の通信販売に多くの市民が参加したことに象徴されるように、コロナ禍において孤立し、困窮の度合いを深める路上生活者に手を差し伸べる市民の動きも活発になっている。

 実は、この間、つくろい東京ファンドが運営する個室シェルターに入居した5人の「長期路上」の高齢者も、地域の住民や医療機関の関係者が声をかけて、私たちにつなげてくれたという経緯があった。自宅や職場の近くで路上生活をしている人に声をかけ、私たち支援団体につないでくれたのである。

 こうした市民の動きは以前からあったが、コロナ禍で孤立しがちな路上生活者を心配した人たちが、普段以上に声かけをしてくれた結果、「長期路上」の人たちが支援につながる結果になったのではないかと私は考えている。

 東京都中野区で、路上生活者への「声かけ」を自主的に続けている丸茂亜砂美さんは、5歳と7歳のお子さんを育てながら、「子育て環境向上委員会@中野」という任意団体で、子育ち・子育ての環境の改善に取り組んでいる女性である。

 丸茂さんが私たちの活動を知ったのは、つくろい東京ファンドが運営している「カフェ潮の路」(現在は休業中)にお客さんとして来られたのが最初である。「カフェ潮の路」は、シェルターを出て、地域で暮らしている路上生活経験者の仕事づくりと居場所づくりを目的としているカフェで、地域住民と路上生活を経験した人たちとの交流の場にもなっている。

 「カフェ潮の路」には、「お福わけ券」という独特の仕組みがある。「お福わけ券」は、カフェに来たお客さんが「次に来る誰か」のためのランチ代やコーヒー代を「先払い(寄付)」する仕組みで、これにより所持金のない人も飲食できるようになっている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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