2020年10月27日
私たちは建物の中で日々過ごしているので、地震の時に感じる横揺れは建物の応答である。この揺れに対して安全を確保する必要がある。建物の中の揺れは、地震の大きさ、震源域からの距離、地盤の硬軟や、建物の構造や高さ、建物内の居住階によって異なる。家具の転倒防止などの室内の安全対策は、この揺れに対して行う必要がある。
多くの建物の耐震設計では、建物の平均的な横揺れ(加速度応答)に相当する量が耐震基準で規定され、その揺れに対して安全性が確認されている。すなわち、地震のときの建物の揺れと、耐震基準に規定された建物の揺れとの大小関係によって、安全性が判断される。また、同じ建物の中でも、低層階に比べ高層階の方が強く揺れる。高層階に住む場合には、家具の転倒防止は必須である。強く揺れれば、エレベーターも止まる。高層階で籠城できるよう様々な備蓄も心がける必要がある。
建物の揺れは、建物に地盤の揺れが作用することで生じる。実は、建物と地盤の相性によって、同じ地盤の揺れでも建物の揺れは全く異なる。建物の揺れやすい周期成分を多く含んだ地盤の揺れに対しては、建物は大きく応答増幅する。これを、共振という。下敷きを手にもって、手を左右に揺すってみてほしい。手の揺すり方で揺れ方は全く違う。
地震の時の地盤の揺れ方も様々である。強い揺れと弱い揺れ、ゆったりした周期の長い揺れと小刻みな周期の短い揺れ、短い時間で終わる揺れと長い時間揺れ続ける揺れなどである。これらは、それぞれ、揺れの強さ、揺れの周期、揺れの継続時間に当たる。
しかし、一般の建物の耐震設計では、こういった建物の揺れ方を考えることはない。地盤や建物の揺れ方を考慮するのは超高層ビルや免震ビルなどの特殊な建物に限られており、多くの場合には、耐震基準で定められる建物の平均的な応答に対して安全性が確認されている。従って、同じ地震でも、揺れやすい地盤に建つ揺れやすい建物は、地震の時に損壊しやすいということになる。
そこで、地震の時の揺れについて考えてみる。
地震そのものの大きさは地震規模を表すマグニチュード、地震のときの地面の揺れは震度で表現されることが多い。マグニチュードや震度には様々な種類があるが、日本では、一般に気象庁マグニチュードと気象庁震度階級が使われる。震度階には、震度0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階がある。
マグニチュードは、もともと、震源からある距離離れた場所の揺れの最大振幅の対数をとったものである。一方で、震度階は、元来は人間が感じた揺れの強さや被害の様相に基づいて、体感などによって決められていた。人間の体感は、揺れの振幅の対数に比例すると言われる。何れも揺れの振幅の対数に関わる量なので、震源と観測点が同じであれば、マグニチュードが大きくなると震度も大きく
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