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日本の観光復興のカギを握るインバウンド客が戻ってくるこれだけの理由

日本の観光復興と訪日インバウンドを考える

小松﨑友子 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

訪日旅行者の数が示す日本観光の可能性

 日本の持続的な成長にインバウンドは必要。そうはいっても、訪日観光客が再び日本にやってくる保証はあるのか、と疑問を持たれる方は少なくないだろう。円安、LCC、観光ビザ緩和などによる日本ブームは、すでに終わっているのではないかと思う方もいるだろう。

 下のグラフは為替レートと訪日旅行者数の相関図である。

 確かに、2012年半ばから急激に円安が進んだ後、旅行者数が大きく伸びている。訪日旅行者数の拡大には円安が起爆剤となったことは間違いない。2015年の中国向けの観光ビザの条件緩和が訪日客数の増加に関係しているのも事実だと言える。

拡大◇為替レートとインバウンド旅行者数の関係性 =出典:月間訪日観光客数と為替レート(東洋経済オンライン)

 しかし、そういった環境による要因のみが、インバウンドの急成長を実現させたのではない。

 世界経済フォーラムが発表した2019年世界旅行・観光競争力ランキングの結果をご覧いただきたい。日本は世界で第4位に位置付けられている。

 このランキングは単なる観光の人気ランキングではなく、治安の良さやインフラの質、環境の持続可能性など、様々な要素から評価されている。

拡大◇2019年世界旅行・観光競争力ランキング=出典:World Economic Forum “The Travel & Tourism Competitiveness Report 2019”

 以下は、訪日経験のある台湾人に聞いた、「日本観光の魅力」についての調査である。訪日旅行目的の調査で上位に挙げられたのは、「風景・景色の観光」、「飲食」、「ショッピング」などであるが、満足度の調査でトップに位置したのは、観光コンテンツではない「清潔感」であった。より安心・安全な感染症対策が求められるコロナ後の世界において、このような評価を得ていることは、日本の観光にとって明るい材料であるといえる。日本がもつ“観光力”の底堅さが透けてみえる。

拡大◇「台湾人の訪日観光に関する調査」訪日観光の目的=出典:株式会社NEOマーケティング「台湾人の訪日観光に関する調査」より抜粋

拡大◇「台湾人の訪日観光に関する調査」訪日観光の満足度=出典:株式会社NEOマーケティング「台湾人の訪日観光に関する調査」より抜粋)

外国人が発見する日本の魅力

 実際、北から南まで、変化に富む各地の自然と文化、温泉・旅館、ユネスコ無形文化遺産にも登録された日本の食、治安の良さや商品の品質に代表される日本ブランドへの安心感・信頼性など、日本の観光は海外から高く評価されている。

 そうした魅力が外国人によって“発見”されることもある。一例を挙げよう。

 岩手県八幡平市に「ドラゴンアイ」と呼ばれる場所がある。鏡沼という沼の雪解けの様子が、まるで竜の目の様に見えることにちなむ命名だが、この“光景”を発見し、世界に広めたのは一人の台湾人旅行者と言われている。2016年、同氏がこの雪解けの様子をSNSで「龍の目」と表現して発信したことから火が付き、たちまち世界に広がって観光資源化されたのである。

 こうした現象は以前から起きていたが、地元に住む人たちは特段珍しいものと考えておらず、外部に発信もしていなかった。外部の目による再発見の結果、現在では海外だけでなく、国内からの旅行者も多数訪れる観光名所へと成長した。

 訪日観光客が観光地の魅力を高めるケースもある。

 下のグラフは徳島県三好市・祖谷温泉の宿泊者数の推移である。2013年を境にインバウンドが急増しているが、それに合わせて国内旅行者も増加しているのだ。

拡大◇徳島県三好市・祖谷温泉の宿泊者数の推移

 これには大きく三つの理由が考えられる。

 第一に、官民でインバウンドプロモーションを行った結果、国内メディアにも露出が増え、日本人が魅力を再発見するという二次的な波及効果を得られたこと。第二に、インバウンド向けに設備投資を行った結果、日本人の需要も刺激したこと。第三に、インバウンド対策として調査や分析を行ったことで、自らのコンテンツを顧客目線で客観的に評価できるようになり、結果、観光コンテンツの磨き上げにつながったことである。

拡大祖谷温泉のケーブルカー (c)ホテル祖谷温泉

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筆者

小松﨑友子

小松﨑友子(こまつざき・ともこ) 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

東京都出身。広告代理店を経て独立。日本の「旅」と「食」を国内外に発信するマーケティングプロデューサーとして、日本全国の自治体及び企業のブランディング・マーケティングに関する課題の解決に取り組んでいる。大の映画好きであり映画関係者のコミュニティを運営。株式会社iNTO(イントゥ)代表取締役、早稲田インバウンド・ビジネス戦略研究会メンバー。「ジャパン・ツーリズム・アワード」メディア部門賞受賞「インバウンド・ビジネス戦略」共著にて出版。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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