岡田幹治(おかだ・もとはる) ジャーナリスト
1940年、新潟県高田市(現・上越市)生まれ。一橋大学社会学部卒業。朝日新聞社でワシントン特派員、論説委員などを務めて定年退社。『週刊金曜日』編集長の後、フリーに。近著に『香害 そのニオイから身を守るには』(金曜日)、『ミツバチ大量死は警告する』(集英社新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
未経験の副作用発生の可能性。接種するかどうかを自分で決める自己決定権が大切
政府は10月27日、新型コロナウイルス感染症のワクチンを確保し、接種を進めるための「予防接種法改正案」を閣議決定し、国会に提出した。
政府はすでに、来年前半までにワクチンを国民全員に提供できる数量の確保をめざし、英米の3社と基本契約などを結んでおり、長引くコロナ禍に苦しむ人たちにワクチンへの期待が高まっているようだ。
しかし、ことはそれほど簡単ではない。
新型コロナワクチンの開発は異例のスピードで進められており、安全性も有効性も十分には確認されていない。しかも政府が購入を予定しているワクチンは従来にない新しいタイプのもので、これまで経験したことのないような副反応(副作用)が発生する可能性がある。
開発の実態を知った研究者やジャーナリストからは、「新型コロナの感染による被害より、ワクチンの副作用による被害の方が大きくなる可能性がある」という指摘が相次いでいる。]
予防接種法改正案の主な内容は、①国が買い上げたワクチンは接種費用を無料とし、個人や自治体に負担は求めない、②接種後に重い副作用による被害が出る場合に備え、患者の救済措置を整えるとともに、ワクチンメーカーが払う損害賠償金を政府が補償する契約を結べるようにする、③接種は国民の努力義務とするが、有効性や安全性が十分に確認できない場合は努力義務を適用しない――というものだ。
この改正案が成立すれば、ワクチン接種の法的枠組みが整うことになる。
厚生労働省は、開発の最終段階である「第3相臨床試験」に進んでいるワクチンの確保に動いており、米ファイザー社および英アストラゼネカ社と、開発が成功した場合それぞれ1億2000万回分の供給を受けることで基本合意している。
さらに10月29日、米モデルナ社から5000万回分の供給を受ける契約を結んだと発表した。
世界ではワクチンの開発競争が激しくなっており、ロシア政府は8月、国産第1号のワクチンを第3相試験前に承認・実用化した。また中国政府は国産ワクチンを第3相試験と並行して医療従事者などに緊急投与し、年内の実用化をめざしている。
日本国内では数社が開発中で、このうち創薬ベンチャー企業のアンジェスのワクチンは第1・2相試験を始めている。
以上六つのワクチンについて、製造企業・種類・接種回数をまとめておこう(ワクチンの種類については後に説明する)。
米・ファイザー=RNAワクチン、2回接種
英・アストラゼネカ=ウイルスベクターワクチン、1~2回接種
米・モデルナ=RNAワクチン、2回接種
ロシア・ガマレヤ研究所=ウイルスベクターワクチン、2回接種
中国・シノファーム=不活化ワクチン、2回接種
日・アンジェス=DNAワクチン、2回接種