「尊厳も公正さ」も存在しないホワイトハウス
2020年11月11日
ニューヨーク時間の11月7日土曜日午前11時過ぎ、通りから人々の大きな歓声が聞こえてきた。続いて車のクラクション、各アパートメントの窓から人々が身を乗り出して鍋などを叩く音。歓声は、ますます大きくなっていく。マスク姿で抱き合う人々の姿も見えた。
ジョー・バイデン大統領候補の当選が確実になった瞬間だった。
アメリカの中でも多様な民族を抱えるニューヨーク市は、圧倒的にリベラルが強い。人々の教育レベルの平均値も高く、大きなLGBTQコミュニティなど、多様性のある文化背景がある。そんなニューヨーカーの間では、新型コロナウイルスを軽視し、白人至上主義を公然と庇い、ホワイトハウスを私物化してきたトランプ大統領に対する批判の声は、街に満ち溢れていた。
「今回の選挙の主要な争点は、共和党と民主党の政策の違いではなかった」と説明するのは、医療関係に従事する50代の白人男性である。
「アメリカが、尊厳と公正さを取り戻せるかどうかの闘いだったんです」
だが少なくともトランプ氏と共和党の一部にとっては、まだ闘いは終わっていない。
ドナルド・トランプ氏はあらゆる面で、歴代の大統領とは全く異質だった。
彼がホワイトハウス入りをするまで、大手メディアの記事や放送を「フェイクニュース」と呼んだ米国大統領は、かつて一人もいない。
何度もピューリッツァー賞を受賞してきたニューヨーク・タイムズ、CNNなどは、最も権威ある報道機関として、これまで長年世界中から信頼されてきた媒体だ。もちろん過去に誤報、偏った切り口の報道がまったくなかったという意味ではない。だが少なくともコラムニスト、記者、校閲部門、最終的な判断を下す編集局の知的水準の高さでは、世界の最高峰の一つとされてきた報道機関である。
だがトランプ大統領は自分に都合の悪い報道は、どれほど裏付けをとった内容であっても、「フェイクニュース」と切り捨ててきた。その一方でトランプ大統領はツイッターやFacebookを通して、荒唐無稽な主張を世間に広め続けてきたのである。
ところが今年の5月、トランプ大統領の「郵便投票は不正の温床である」というつぶやきに、
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