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深刻なアスリートへのセクハラにスポーツ界が初の声明発表

増島みどり スポーツライター

拡大アスリートに対するセクハラ問題で11月13日に記者会見を開いた日本オリンピック委員会の山下泰裕会長(右から2人目)、スポーツ庁の室伏広治長官(同3人目)ら。手前に掲げられたポスターは、競技会場に掲示したり配ったりするという=東京・霞が関の文部科学省

相手が見えない恐怖と、選手が抱えるトラウマ

 「記録やタイトルをかけて極限状態で戦っている試合なのに、終わった後にあんな画像を目にして、ショックよりもモチベーションが大きく低下した。周囲にそんな被害を相談するのは恥ずかしく、ためらいましたし、恐怖心があった。どうすればいいのか、結局、現役の間に答えを出せなかった問題でした」

 現役時代に競技中の写真を加工され、SNSで拡散された経験を持つ選手はこう振り返る。すでに20年ほど前から問題視されていたが、解決策を見いだせないまま、被害状況は悪化の一途をたどっている。この選手が投稿された写真では、ユニホームと体毛を強調されるように加工されていた。盗撮されたものではなく、報道目的で撮影されたもので、インターネットのニュース配信で使われている競技中の写真だった。まさか、こういった形で悪用されるとは想像もしていなかっただけに、ショックは大きかったという。

 国際大会でも活躍したこのトップアスリートは、今回の陸上女子選手の訴えを「勇気がいったと思う」と慮り、写真や動画によるセクシュアルハラスメントに具体的に対抗する施策を求める。現役を引退してからも残っている写真があるからだ。「せめて注意喚起を」と、指導する選手たちがこうした被害に遭わないよう、出場をエントリーする際には必ず、運営組織、保護者に対して情報共有を依頼するそうだ。

 今夏、2人の女子陸上選手が日本陸連に対し、SNSに投稿されたセクハラ被害を訴えた。これをきっかけに、JOC(日本オリンピック委員会)が、初めて競技団体への聞き取り調査を行ったところ、他の競技でも同様の被害が報告されていると判明。しかも女子アスリートだけではなく、男子選手や中高生の性的な意図による嫌がらせ被害も確認された。競技団体も衝撃を受けている。

 盗撮被害を受けた女子大学生の中には、競技中、自分が知らないうちにこうした画像が撮影されているのではないか、と常に恐れ、ある種のトラウマに悩まされたと告白する。

 「試合前に1人でウォーミングアップしていると、こんな体勢を誰かに撮影されているんじゃないか、と周囲を見てしまったり、競技中にカメラを見ると自分が撮られている、と思い込んで・・・そういう精神状態に陥って試合を会場でキャンセルした経験もあります」

 カメラの持ち込みを全面的に禁止できる大会ならば、こうした不安も多少は消える。しかし、彼女が盗撮された大会は規模も小さく、また屋外競技では不特定多数が観戦可能で特定ができない。これが恐怖心をさらに増幅させる。若年層、男子選手への被害も同様に、監視の少ない競技会や練習での盗撮で発覚した。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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