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 「この年末年始には、年越し派遣村のような取り組みをするのですか」と、報道関係者から質問される機会が増えてきた。

 コロナ禍の第三波が日本列島を襲い、経済の疲弊と雇用の悪化が長期化する中、生活に困窮し、新たに住まいを失う人が増加しつつある。

 東京・池袋でホームレス支援を続けるNPO法人TENOHASIが定期的に実施している炊き出しの場では、10月以降、通常時の1.5倍にあたる約270人が集まるようになっている。都内の他地域の炊き出し現場でも同様の傾向にあると聞く。

 私たち、都内の生活困窮者支援団体の関係者は、最悪の場合、この冬にホームレス化する生活困窮者が急増するという事態が発生することも想定し、年末年始の支援体制について、すでに協議を始めている。

 だが、コロナの感染リスクを考慮すると、2008年~2009年の「年越し派遣村」のような宿泊を伴う大規模な相談会は、実施が困難であると言わざるをえない。どのような形での支援なら可能なのか、現在、検討を進めているところである。

生活困窮者の年末年始支援に関する質問を政府や自治体にもぶつけてほしい

 貧困の危機が迫ると、民間の支援団体の活動に注目が集まるのは、自然なことなのかもしれない。

 しかし、メディア関係者の方々にお願いしたいのは、「この年末年始の対策をどうするのか」という同じ質問を政府や自治体の担当者にもぶつけてほしいということだ。

 菅義偉首相は、「まずは、自分でやってみる。自分でできることは基本的には自分でやる、自分ができなくなったら家族とかあるいは地域で協力してもらう、それできなかったら必ず国が守ってくれる」という「自助、共助、公助」の3段階論を好んで主張しているが、私たち民間の支援者が「共助」の活動を進めているのは、目の前で困窮している人を支えるためであって、「公助」の防波堤になるためではない。

 実際、私たちは今春以降、民間での緊急支援活動を展開しながら、政府に対して何度も貧困対策の強化を要望してきた。

 メディア関係者は、「公助」を「自助」や「共助」の影に隠そうとする動きに加担することなく、人々の住まいと暮らしを守るという公的な責任を政治が果たしているのか、という視点を持って、貧困をめぐる報道に努めてほしいと願っている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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