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広がる植物由来の「お肉」と動物の未来

食習慣から考える動物との付き合い

梶原葉月 Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

身近になった植物由来ミート

 「本当にまるでお肉ね! 私、ベジタリアンのお友達がたくさんいるから、今度連れてくるわね」と、60代くらいの女性はお店のスタッフに熱心に喋りかけていた。

 コロナ禍が未だに収束の兆しも見せない中ではあるが、大学に出かける必要があり、ついでに食事もしようと思い、いたしかたないので対面接触の少なそうな店を選んでみた。こんな大変な時期に、新規オープンしたというグルメバーガーの店だ。しかも、なぜかオランダから進出してきたという。

植物由来の「肉」だけを使ったハンバーガー
 店名は、The Vegetarian Butcher(ベジタリアンブッチャー)。

 そう、なんとこの店は、植物由来の「プラントベースドミート」だけを使ったハンバーガーの店で、プラントベースドミートの販売コーナーも併設しているのだ。

 創設者のヤープ・コルテベーク(Jaap Korteweg)氏は、肉の消費が動物、自然、環境、気候そして生物多様性にとって脅威になると考えて、今までにない「美味しい」肉代用品を開発したらしい。

 はたしてその味は? 確かに既存の大豆から作るソイ・ミートなどとはかなり違って、肉らしい食感とジューシーさがある。味はかなりチーズバーガーに近いが、このチーズさえも豆乳をつかって作られたソイチーズだとは驚きだ。

 一昔前なら、日本人にとって「ベジタリアン」というのは、おおむね外国から来た「ちょっと変わった人たち」でしかなかった。とくに、やや宗教的とも言えるほど、動物性の食材や衣服のため動物の利用を完全に拒否する「ヴィーガン」は、なかなか日本人には理解するのが難しかったように思う。

 しかし時代はかわり、日本人にとってもヴィーガニズムやベジタリアニズムは身近になってきた(注1)。モスバーガーでは、今年5月、動物性食材を使わないグリーンバーガーの発売を全国で開始したし、ドトールも9月から植物由来の食材にこだわった大豆ミートバーガーを販売している。

(注1)ベジタリアンといっても乳製品は食べるなど、かなり幅があり正確に定義しようとすると細分化していくので、ここでは完全に動物からの搾取を排除する立場をヴィーガン、それ以外の菜食主義をベジタリアンとする。

「動物を殺すな」、使命感の強さが軋轢も生む

shutterstock/xamnesiacx
 健康志向や、動物食に対する個人的な罪悪感というのは、日本人に理解しやすい菜食主義の理由だが、もっと大きな枠組みで動物利用を全てやめるべきだと考える人たちもいて、その出発点としてヴィーガンであることを選んでいる人も少なくない。

 私の主な研究分野である、「人と動物の関係学」のジャンルには、まさにそういうタイプのヴィーガンの研究者がたくさんいる。私自身はヴィーガンではないが、最終的には人間の利益のための他の動物を利用することをやめるべきだという主張には共鳴できる部分も多い。もちろん、この考え方にもいろいろあって、徹底した主張の中にはペットも全て廃絶すべきという人もいるし、即座に全面賛成というのも難しいところがある。

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