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村元哉中&高橋大輔は「オリンピックでメダルが取れる逸材」

ズエヴァコーチ「カナとダイスケの進歩の速さは、驚異的でした」

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 大阪で開催されたフィギュアスケート2020年NHK杯。アナウンスと共に高橋大輔が、村元哉中(かな)の手を取って氷の上に出てきた。

 頭では理解してはいるものの、何ともシュールな光景に見える。「あの」高橋大輔。男子シングル選手として一時代を築き上げた彼が、村元哉中のパートナーとしてアイスダンサーに転向。ファンにとって夢のような展開で、にわかには信じがたかった。

 2019年の9月に発表されてから、二人の活動状況は定期的に報道されていた。とはいえ、やはり彼がシングルの選手として5回タイトルを取ったこのNHK杯に、アイスダンサーとして登場したのを実際に見ると、まるでマンガの中での物語のような、不思議な光景だった。

NHK杯のエキシビジョンで=2020年11月29日、大阪府門真市の東和薬品RACTABドーム、代表撮影NHK杯のエキシビジョンで=2020年11月29日、大阪府門真市の東和薬品RACTABドーム、代表撮影


リズムダンスは「100点」と村元

リズムダンスの演技をする村元哉中(右)、高橋大輔組=代表撮影リズムダンスの演技をする村元哉中・高橋大輔組=2020年11月27日、大阪府門真市の東和薬品RACTABドーム、代表撮影

 村元はライムストーンを華やかにあしらったブラウンのドレス、高橋は黄色のパンツにネクタイとサスペンダーという衣装だった。今年のリズムダンスは、ミュージカルかオペレッタのいずれかを使用し、クイックステップ、ブルース、マーチ、ポルカ、スイングなどISU(国際スケート連盟)がリストしたリズムの中から選ぶ。

 彼らは映画『ザ・マスク(The Mask)』の中でジム・キャリーが女性とスイングを踊るシーンで使用されたテーマ曲を、ミュージカルとして選択した。

 笑顔で何やら言葉を交わした後、二人は観客席に向かって艶やかに礼をしてから演技を開始した。最初にミッドラインステップシークエンスから演技を開始。このステップシークエンスでは、腕2本分以上の距離が離れてはならないというルールがあるが、驚いたのは二人のブレードの位置がきれいに揃っていて、距離が近いこと。しっかりしたスケーティング技術の基礎があったからこそ、短期間で形にするのが可能だったのに違いない。

 今年のリズムダンスに組み込まれているパターンダンス・エレメンツは、フィンステップ。フィンランドのスザナ・ラコモ&ペトリ・コッコが1995年に演じたクイックステップを基にして、ISUのパターンダンス(旧コンパルソリーダンス)に取り入れられた。上半身は組んだまま、早いテンポでの細かい軽やかな足さばきが要求される。歴史は新しいが、現在30種類以上あるパターンダンスの中でも1、2を争う難易度の高さと言われる。だがシングル時代に、足さばきでは世界一と言われた高橋は難なく軽やかなステップを見せた。

 移動しながらクルクルと回転するツイズルの部分で、高橋

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