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東京オリンピック聖火リレー、全国859市区町村での実施発表

増島みどり スポーツライター

リモートで参加した東北と東京の関係者と、聖火リレーの各都道府県の市区町村順のルートなどを発表する東京2020組織委員会の布村幸彦副事務総長=2020年12月15日、東京都中央区、代表撮影

オリンピアンにとっての聖火とは

 12月13日、講道館(東京文京区)で柔道史に残るすさまじい勝負が繰り広げられた。東京オリンピック代表のうち、1階級のみ決定していなかった男子66㌔級で、17、18年世界王者、阿部一二三(23=パーク24)と、昨年の世界王者、丸山城志郎(27=ミキハウス)が、柔道史上過去なかった1試合のみで決着する「ワンマッチ」方式で対戦。本戦4分後、延長が実に20分間に及び計24分の死闘の末、阿部が初の五輪代表に決定した。

 驚かされたのは、時間の長さばかりではない。24分間、2人は一度たりとも、肩で息をしたり、ひざに手を置いたりしなかった。「待て」から始動する際も、時間稼ぎや苦しそうな様子を見せていない。相手に悟られまいとする勝負の駆け引きだとしても、コロナ禍の不利にどれほどのトレーニングを積んだのか。想像をはるかに超えるスタミナ、集中力、精神力を持ってオリンピックという4年に一度の大舞台を目指した姿に圧倒された。

 「オリンピックを目指し、全てをここにかけて日々ひたむきにやってきた。そこに悔いはない」

 敗れた丸山は涙を流したが、顔を上げた。

 11月には、3月に日本に到着してから中止と、過去例のない事態に直面したまま日本で保管、管理されてきた聖火が、ランタンに灯され石川県内で展示された。

 金沢学院高OGでロンドン五輪57㌔級金メダリストの松本薫氏が会場となった「いしかわ総合スポーツセンター」で歓迎セレモニーに出席。昨年引退したものの、ランタンを運ぶ姿は緊張感に満ち、「コロナ禍の中、皆さんの思いがたくさん詰まった聖火なので、消してはいけないと久々に心を野獣にして運んだ」と話し、聖火リレー本番では石川県内を走るため「オリンピックに臨むようにしっかり走りたい」と、200㍍の距離にも真剣な表情を見せた。

 15日、東京五輪組織委員会は来年の聖火リレーが、今年予定されていた全国859市区町村で実施されると発表した。来年3月25日、福島県をスタートし、延期前と同じ都道府県の順番と、およそ1万人のランナーが121日をかけて全国を「Hope Light Our Way」=希望の道を、つなごう、をテーマにリレーする。競技会、聖火リレーと五輪の二大柱の日程が延期にもかかわらず、来年にほぼ「コピペ」されたのは、準備交渉の賜物である。

懸念される「密」回避を模索

 聖火リレーも実際には様々な点で変化をしてきた歴史を持つ。08年、北京五輪の聖火リレーの際は、中国のチベット問題に対する抗議が各国で行われ火が消されるなどの混乱が起きた。これにより、世界規模で行われてきたリレーを、10年のバンクーバー冬季五輪からは採火するギリシャと開催国でのみ行うようにルールが変更されている。

 今回は、3月に日本に聖火が到着した後、五輪の延期が決定したため、聖火そのものの扱いも異例の事態となっている。聖火の保管・管理は組織委員会に任されており、延期によって、日本にすでに到着している聖火が従来の3カ月程度から一気に1年も保管する結果に。チャーター機で3つのランタンに灯されて到着して以来、保管場所は一切明かされず、

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