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記者クラブが「ジャーナリズムのネットワーク化」を阻み、マスコミ経営を圧迫している

独立した個人を基点とする世界のジャーナリズムのネットワーク化に乗り遅れるな

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

デジタル・トランスフォーメーションとネットワーク化

 ジャーナリズムのネットワーク化とは単にインターネットやパソコンを駆使した取材編集やその体制ではなく、マスコミ組織内部の知識やノウハウを外部と共有しつつ、費用対効果の最適解に引き出すネットワークをベースにしたジャーナリズムの生産様式のことだ。これが欧米を中心に広がっている。

 ある産業の生産様式がパレート最適でなくとも、その国・地域に特異的な生産様式を受け入れざるを得ないことが、経済学の比較制度分析で証明されている。自前主義が尊ばれ、個人主義が疎まれる生産様式は現在でも機械工業を主体とした日本の産業界全体に拡がる。本来、個人のプロフェッショナルな活動が主体となるマスコミ組織だが、日本ではその生産様式も極めて機械工業的であることからもうかがえる。

 組織内でのコーディネーションが重視され、これが日本の競争優位を支えてきたのは確かだ。しかし、現代では通用しない。米国のIT産業が強力な競争優位を築いた背景には、その先端的な技術開発力だけでなく、部署や個人といった小単位が組織と国境を越えてネットワークを構築し、部品調達や生産工程を最適化したことにある。

 この動きが米国内ではIT産業に留まらずマスコミ産業を含め全体的に拡がっている。これがいわゆるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の潮流だ。

拡大Blue Planet Studio/Shutterstock

諸外国のジャーナリズムの現況

 筆者が昨年、フランス・パリで開かれた世界ジャーナリズム教育評議会(WJEC)の学会に参加したときのことだ。大会テーマは「破壊的な時代のジャーナリズム教育」。つまり、マスコミ産業が崩壊する中、次世代ジャーナリスト養成の大学教育を考えるという趣旨だった。この核心部はネットワーク化と起業化にあった。これについてみていこう。

 米国ではすでにポスト・マスメディア時代に突入した。そこでは起業家ジャーナリスト養成やマスコミ企業と大学やNGOとの協働、そしてジャーナリズム界のDXが実践あるいは研究され、その一部が大学でカリキュラム化されている。

 一方のヨーロッパでは欧州高等教育圏を創造するボローニャ・プロセスが進められ、ジャーナリスト養成やジャーナリズム活動のEUを中心としたネットワーク化の構築を目指している。さらにこの動きが発展途上国や新興民主化国にまで拡がりつつある。

 ここでは独立した個人を基点としているのが特徴だ。個人がジャーナリズム活動のTPOに従ってマスコミ企業といった組織の壁を乗り越えて行き来し、時に起業をしてフリーランスやブロガーとして活躍することが求められる。この中で新参者のジャーナリストの活躍の場が提供される。

 当然、マスコミ企業もこれらの障壁を取り払い、記事の質の向上を図るほか、革新的デジタル技術の早期導入、多様性と国際性を担保することで、生き残りを賭けている。つまり、個人のジャーナリストが様々な組織間をネットワーク化させることで、その労働市場に劇的な新陳代謝を促しているのだ。

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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