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[48]コロナ禍の年末、生活保護行政に変化の兆し

必要な時に遠慮なく使える「普通」の制度に

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

厚労省が生活保護制度利用を「権利」と明言

 「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を申請する可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」

 12月22日、厚生労働省は生活に困窮している人に生活保護の利用を促す異例のメッセージをホームページに掲載した。

新設された「生活保護を申請したい人へ」というページでは、上記のメッセージが白抜きの字で大きく掲示されており、全国の福祉事務所の一覧をまとめたPDFも新たにアップされた。

拡大厚生労働省のホームページ

 厚生労働省が社会保障制度の利用を促す広報をおこなうのは、ある意味、当たり前のことである。

 だが、こと生活保護制度に限っては、この当たり前のことが行われてこなかった歴史がある。

 私たち生活困窮者支援団体の関係者は、今春以降、コロナの経済的影響で仕事と住まいを失う人々の緊急支援に取り組んできた。

 しかし相談現場では、住まいを失い、路上生活となり、所持金が数十円、数百円になった方からも、「生活保護だけは受けたくない」と言われることが多く、対応に苦慮している。

 その背景には、一部の政治家が主導する形で生活保護へのバッシングが繰り返された結果、制度のマイナスイメージが広がってしまっているという問題がある。そのため、自分が権利として利用してもよいと思えない人が多いのだ。

 そうした社会の空気を変えていく意味で、厚生労働省が制度利用を権利であると明言した意義は大きい。

 私は今回の方針転換を大いに歓迎し、政府がさらに広報を強化していくことを求めていきたい。インターネットにアクセスしない層に働きかけるために、駅の広告やテレビコマーシャルといった手法も導入してほしいと願っている。

 私たち、生活保護制度の改善を求めてきた反貧困運動の関係者は、長年、政府に対して、生活保護制度の積極的な広報をおこなうことを求めてきたが、これまで厚生労働省が積極的に動くことはなかった。

 特に今春以降は、コロナ禍の経済的影響により貧困が拡大している状況を踏まえ、各団体が何度も同様の要望を行ってきた。

 だが、厚生労働省は他の貧困対策の制度(社会福祉協議会の貸付制度や住居確保給付金)の広報については、ホームページ上に特設ページを作るなど、力を入れてきたが、生活に困窮した人を支える最後のセーフティーネットである生活保護制度については、目立った広報を行ってこなかった。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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