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[48]コロナ禍の年末、生活保護行政に変化の兆し

必要な時に遠慮なく使える「普通」の制度に

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

生活保護申請に「相談」というカベ

 しかし、生活保護の申請書については、役所を訪れた人が手に取れる場所に設置している自治体は、ほとんど存在しない。

 生活保護を利用したいと思う人は、まず相談カードを提出した上で、「相談」という形で相談員との面談を受けなければならない。

 自治体によって対応に差はあるが、この「相談」が水際作戦の温床になっている現状がある。相談者が申請書を手にするには、「相談」をくぐり抜けなければならないからだ。

 相談員の中には、相談者の生活や仕事の状況を事細かく聞き取った上で、申請書を最後まで持って来ることなく、「では、がんばって仕事を探してください」と突き放す人もいる。また、「若い人は受けられない」、「住まいがない人は住民票のあるところで相談してください」等と虚偽の説明をして、追い返そうとする相談員もいる。

 厚生労働省は、これまで各自治体に対して、申請権の侵害はあってはならないこと、申請権を侵害していると見られるような行為も厳に慎むように、と何度も通知を出しているが、いまだに水際作戦は根絶されていない。

 生活保護の申請は、特定の方式によらなくてもよい「非要式行為」とされており、申請の意思が明確であれば、口頭でも有効であるとされている。申請書の用紙も、役所のフォーマット以外でも有効なので、私たち支援者が同行する際は、事前に独自の申請書に必要事項を記載してもらった上で窓口に持って行くことにしている。

 「フミダン」では、この申請書のPDFをホームページ上で簡易に作ることができる。申請をしたい人は各自、PDFをプリントアウトして、窓口に持って行けば良いことになる。

 また、インターネットファクスの機能を使ってファクス申請をすれば、「相談」をスキップできるので、送信をした時点で申請行為が完了したことになる。

 私たちが「フミダン」を開発した目的は、水際作戦を無効化し、窓口での不毛なやりとりをなくすことにある。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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