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ラケットを携えた老提督

【1】南雲忠一大将(日本海軍)

大木毅 現代史家

硬直していた海軍人事

 すでに真珠湾攻撃計画は完成しつつあり、第一航空艦隊もその任に当たるために新編成された部隊だった。すなわち、この空母機動部隊の司令長官は、一日にして日米戦争の前途を決しかねないような重大作戦実施の責任を負うことになる。かかる局面で、空母を運用した経験を持たぬ南雲に真珠湾攻撃の指揮をゆだねるとは、なんとも奇怪な人事ではなかろうか。戦後、優れた指揮官として高い評価を得ている小沢治三郎をはじめ、航空隊や空母には手練れの指揮官はほかにもいたのに、海軍中央は、なぜ彼らをさしおいて、南雲に機動部隊を預けたのか。

拡大真珠湾(パールハーバー)で日本軍の攻撃を受け、黒煙を上げて沈む戦艦アリゾナ=1941年12月7日(現地時間)

 そこには、官僚組織としての海軍の論理が

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筆者

大木毅

大木毅(おおき・たけし) 現代史家

1961年東京都生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。専門はドイツ現代史、国際政治史。千葉大学などの非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、陸上自衛隊幹部学校(現・陸上自衛隊教育訓練研究本部)講師などを経て、現在、著述業。著書に『「砂漠の狐」ロンメル』、『ドイツ軍攻防史』、『独ソ戦』、『帝国軍人』(戸髙一成と共著)、訳書に『ドイツ国防軍冬季戦必携教本』、『ドイツ装甲部隊史』など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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