厳しい「年越し寒波」が予報されている。
南米ペルー沖の海水温が下がる「ラニーニャ現象」が続いている影響で、1月を中心に日本列島には寒気が流れ込みやすくなっているという。特に年末年始に「数年に一度レベル」の非常に強い寒気が流れ込み、日本海側を中心に大雪になると予想されている。道路の寸断や孤立集落の発生、局地的豪雪による市民生活やドライバーへの影響等が危惧される。
私は元来、雪氷災害分野で総合的に全国調査・研究を行ってきた。北海道から九州、四国に至るまでの豪雪や除雪等に関する分野が専門である。その立場から、論座に『関越道の大量立ち往生を「予想外の大雪で…」で片付けてはいけない』(12月23日)を寄稿したが、それに続いて今回の「年越し寒波」について注意喚起したい。
雪に不慣れな西日本は特に注意!
「年越し寒波」で特に注意しなくてはならないのは、雪にあまり慣れていない西日本だ。今のところ、山陰や九州北部における警戒が叫ばれている。
2017年には鳥取県を中心に被害が大きかった。JR山陰線で列車が約22時間立ち往生し、道路のいたるところで自動車が立ち往生し、チェーン装着中の事故で犠牲者も出た。
2016年1月のいわゆる「平成28年豪雪」では、九州各地で水道管破裂が多発し、福岡県大牟田市などで大規模な断水となるなど、寒波が去ったあとも数週間にわたって影響が続いた。私が熊本大学で特任准教授をしていた2016~2017年には、山間部で道路が凍結したうえ、熊本地震直後で多くのう回路が使用されている状況であったため、熊本県内で救急車など緊急自動車の出動が困難な場合は隣の宮崎県内への搬送が推進された。
私はいずれの事案も調査・研究にあたったが、双方に共通して感じたのは、西日本は地震や風水害に比べて雪氷災害への対応に慣れておらず、脆弱だということだ。
西日本で災害が発生した場合、関西広域連合が災害支援に入ることになっているが、徳島県の山間部で2014年に豪雪によって孤立集落が多数発生した際には、効果的な支援はほとんど行われなかった。雪に慣れていない地域は、特に局地的な豪雪にはほぼ無防備に近い状態だ。
九州では水道凍結を防止するための断熱材などが附帯されていないので、極度な気温低下に見舞われるとただちに生活に支障が生じる。

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徳島では、支援にあたる県の車両にスタッドレスタイヤを装着されていないことなど基本的な対策がなされていなかった。その結果、孤立化した山間部の集落では住民自身が重機を使って除雪したり倒木を除去したりした。
孤立集落では、食料はある程度ストックがあり、困らないことが多い。大きな課題は暖房用燃料の確保だ。山間部には高齢者が多く、どうしても外部からの支援が不可欠だ。
健康に関わる問題もある。持病を抱えている住民は、外部からの医療支援か、外部への搬出が必要だ。そのためには孤立集落へのアクセスを確保する事前準備が欠かせない。徳島では豪雪の経験を踏まえ、要配慮者を外部の医療機関へ速やかに移動させるために、ヘリコプター着陸場所の整備が進んでいる。
こうした地域は高齢化が顕著で、病弱者を支える人も高齢者というのが実情だ。孤立集落内の状況を把握し外部の関係機関と情報共有する地域の「代表者」が必要になる。この代表者の安全も担保しなくてはならない。
この年末年始、寒波や大雪が予想される西日本で、以上のような貴重な事例を活かしてほしい。自動車の運転を控えるか、スタッドレスタイヤの利用は必須だ。ノーマルタイヤでの利用はドライバー本人を危険にさらすのみならず、他の自動車の利用を妨げ、緊急自動車の走行における遅延になる。このあたりの感覚が雪国の人達と全く違うのが一番怖い。