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今年の大雪は危険! 立ち往生再び、除雪中の事故も急増

古本尚樹 防災・危機管理アドバイザー

 北陸を中心に1月9日~11日の3連休、豪雪で車両が立往生する事態が相次いだ。高速道や一般道で最大1200台以上の車両が動けず、救出活動が続いた。福井県は陸上自衛隊に災害派遣を要請し、自衛隊員や県職員らが動けなくなった車両をけん引した。

 新潟や北陸を中心に7日から続く大雪では、全国で少なくとも13人が亡くなったと報じられている。その多くが高齢者だ。原因は雪下ろしの際の事故や除雪車との事故などである。

 著者は昨年末、『関越道の大量立ち往生を「予想外の大雪で…」で片付けてはいけない』(論座2020年12月23日)で立ち往生を避けるための準備を訴えたが、新年に入り局地的豪雪とそれにともなう道路での立ち往生が頻発した。今後の予報でも豪雪の可能性が示唆されている。この3連休の立ち往生をしっかり検証し、今後の対策を再構築することが不可欠だ。

動けなくなったバスを押す後続車のドライバーら=2021年1月11日、富山市内

立ち往生が発生する背景

 冬期間に車両の立ち往生が発生する原因はいくつかある。まずはノーマルタイヤの車両やスタッドレスタイヤであってもチェーンをしていない車両が雪に乗り上げることだ。特にトラックなど大型車が一度停まると後続車がう回できず、大規模な立ち往生につながる。

 国土交通省によれば、2015年度に国道で発生した雪による多数車両の立ち往生では、原因となった車両の6割がトラックなどの大型車だった(15年度に国道で発生した立ち往生の原因となった547台のうち61%が大型車だった。中型車は24%、乗用車を含む小型車は15%だった)。勾配が5%以上の坂道での発生が目立ち、チェーンが未装着の車も多かった(把握されている300台が冬用タイヤだったが、うち約270台はチェーンを着けていなかった。また道路の状況別では勾配が2~5%未満の道路で立ち往生した車が約140台だったのに対し、5~9%は約230台と大きく上回る)。

 この立ち往生を回避するためには、物流業界などに大雪時の道路利用を控えるよう要請することが必要だ。

立ち往生を回避するためには

 一番の対策は、ドライバーが気象予報を把握し、危険が察知される場合はその個所を通過しないようにすることである。降雪の予報が出ている場合は、立ち往生する可能性がより少ないルートを選択し、そのリスクを最大限抑えるドライバーの危機管理対策が不可欠だ。

 ひとたび大規模な立ち往生が発生すれば10時間以上続くことは珍しくない。遠回りでも、荒天にならないルートを最初から通るほうが賢明である。気象条件にどれだけ敏感になれるかが重要だ。

車の立ち往生が続き、車道に人影が見える北陸自動車道=2021年1月10日、福井県坂井市周辺
 最近の豪雪は局地的である。降り始めた時にはすでに手遅れになっていることがほとんどだ。道路管理者の除雪能力には限界がある。しかも除雪は車両が除かれた状態でなければできないため、立ち往生が発生してからの対応は困難を極める。

 また、立ち往生で物流が滞れば市民生活のうち特に消費生活活動が停滞する。商品棚から物が無くなる、価格の高騰などはこれまで幾度となく経験してきた。生鮮食品でも葉物と呼ばれる、キャベツやレタス、ホウレンソウなどは天候や物流の影響を受けて品不足になりやすく高騰しやすい。だから立ち往生の発生自体を防ぐことが肝要だ。

 さらに現在は新型コロナ禍である。感染リスクを抑えるため、ソーシャル・ディスタンスを確保しなければならない。除雪作業や支援物資の配布の際に注意が必要となる。その結果、大人数で一斉に作業することは難しく、それだけ時間もかかる。

 我が国の災害時の物流は脆弱で、すぐに店頭での品不足になりやすい。小売店の多くは在庫をあまり置かないシステムになっているうえ、流通経路が多層にわたっていることから、災害対応に適していない面は否めない。

過去にもあった北陸道の立ち往生

 北陸自動車道では2018年1月にも立ち往生が発生し、400台以上の車両が巻き込まれた。同年2月には国道8号で最大1500台の立ち往生が発生した。大型車の脱輪などによる渋滞や、並走する北陸自動車道の通行止めによる車流入が原因とみられる。

 こうした過去の事例から道路管理者を中心に対策が講じられてきたが、今回も立ち往生を防ぐことができなかった。

 北陸地域の高速道また一般道における冬期間の安全対策は、ハード面とソフト面の双方から見直しが必要と思われる。

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