渋谷淳(しぶや・じゅん) スポーツライター
1971年、東京都出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、新聞社勤務を経て独立。ボクシング、柔道、レスリング、ラグビー、バスケットボールなどを取材。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」の編集も。著書に『慶応ラグビー 魂の復活』(講談社)
真の王者を目指す誇り高きボクサーを見て思うこと
プロボクシングの世界チャンピオン、井岡一翔を巡る騒動が続いている。ことの発端は昨年の大みそかに開催されたWBO(世界ボクシング機構)世界スーパー・フライ級タイトルマッチ、チャンピオンの井岡が挑戦者の田中恒成に8回TKO勝ちした試合である。
この試合は日本人初の世界4階級制覇王者である31歳の井岡に、若くして3階級制覇を達成した25歳の田中が世界最速の4階級制覇をかけて挑戦するというもの。戦前の予想が真っ二つに分かれるボクシングファン垂涎の好カードだった。
試合は蓋を開けてみれば井岡が貫禄を見せつけて田中を寄せ付けなかった。予想以上の大差をつけた井岡の株はますます上がった。そのパフォーマンスは日本のファンをうならせただけでなく、海外のメディアでも評判になった。アメリカの老舗ボクシング誌「ザ・リング」が全階級を通じて順位付けするパウンド・フォー・パウンド・ランキングで井岡を10位にランクしたのはその象徴であろう。
しかし、終わってみれば待っていたのはタトゥーを巡る騒動である。井岡が二の腕から肩にかけて彫ったタトゥーがテレビを通じて全国に発信され、「けしからん」という抗議の声が国内ボクシングを統括する日本ボクシングコミッション(JBC)に数多く届いたのだ。
これに反発するかのようにSNS上では「タトゥーを禁止するのは馬鹿げている。時代遅れだ」という声が沸き起こる。ネット上でも井岡のタトゥーに関する賛否両論の記事があふれ、ある種の混乱状態に陥った。
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