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「東京五輪中止」の現実味をスルーする日本マスコミの病理

「五輪開催盛り上げ報道」に漂う異様感

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

五輪スポンサーに名を連ねる大手マスコミ

 先述したように、ニューヨーク・タイムズは1月15日の電子版で東京開催に対する懐疑的な長文記事を掲載した。上掲のバウンド発言などを引用した記事であり、コロナ禍の収束が見えてない以上、「第2次世界大戦後、初の五輪開催中止に追い込まれる可能性がある」としている。これまでの流れや現状からすれば、至極当然の記事である。しかも、記された事実自体には新規性も乏しい。

 ただ、ニューヨーク・タイムズのこの報道を紹介する形で、共同通信は即座に速報を流した。他の日本メディアも「ニューヨーク・タイムズが報じた」とネットで報じている。問題は「開催は困難」との指摘が、外電を紹介する形でしか報道されないことにある。開催地は日本なのだ。それなのに、先述したように「本当に開催できるのか」をきちんと問うた取材記事は日本の主要紙には見当たらない。それもまた、日本のマスコミの病理を示している。

 全国紙で東京都や組織委を取材している記者は「今夏の開催が難しいことは記者の誰もが分かっているでしょう。でも、それを積極的に記事にしよう、社会に投げかけようという機運はありません。どのメディアも自分が先陣を切るのが怖いのだと思います」と言う。

 東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーには読売新聞社と朝日新聞社、日本経済新聞社、毎日新聞社が名を連ねている。オフィシャルサポーターには産業経済新聞社と北海道新聞社が加わっている。メディア委員会にはテレビ局や通信社、新聞社などが揃い踏みだ。

拡大東京五輪・パラリンピック大会組織委員会のオフィスに掲げられている国内スポンサーのパネル=2019年2月15日、東京・虎ノ門

 新聞社やテレビ局も営利企業であり、オリンピックを大きなビジネス・チャンスとして捉えること自体は否定しない。しかし、営利目的が「報道の論理」を食い尽くし、国民が疑問に思う大きなテーマを取材・報道しないのであれば、報道機関としては役割放棄と言えよう。報道をしない期間にも開催に向けて湯水のごとく税金は使われている。

 東京オリンピック・パラリンピックが今夏、本当に開催できるのか、開催すべきなのか。国民の8割が抱く疑問をこれ以上放置すべきではない。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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