川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者
朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。
卒業時の景気が生涯を左右――苦難の連鎖・不遇がいまも続く不条理
全国の自治体の先駆的事例として一昨年7月に表明した就職氷河期世代を対象とした正規職員の採用試験を、兵庫県宝塚市が今年度も進めている。総務省のまとめによれば、同様の試験を導入した自治体は1月18日時点で177団体(36都道府県、141市区町村)に上る。
就職氷河期世代向けの試験に合格した40代の市職員2人に話を聞いて気づかされたのは、就職時の景気動向が一生を左右する運不運と再チャレンジの機会の重要さだった。
大阪府河内長野市保険医療課の奥野学さん(47)は35~50歳を対象にした市の採用試験で昨年8月に合格、10月から正職員として働いている。それまで16年半は同じ課で非正規の職員だった。
奥野さんは景気後退期だった1995年に私立大の外国語学部を卒業、約100社にエントリーシートを出した末、会社訪問解禁後に募集があった大手スーパーに就職できた。しかし、業績が悪化する勤務先を4年10カ月で辞め実家に戻った。派遣社員を半年したあとは無職となり、実家にこもっていた。
広報紙で見つけた地元・河内長野市の嘱託職員に応募、国民健康保険の徴収・収納を担当する非正規の職員になった。
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