生活保護利用を阻害する「扶養照会」をやめてください
2021年01月25日
支援を求めて集まる人が増加しているのに加え、従来とは異なる層の人たちが炊き出しの列に並ぶという現象が起こっているのだ。
仕事が途切れ、公的な福祉の窓口も閉まる年末年始は、生活困窮者にとって厳しい時期である。「年越し大人食堂」は、その時期に温かい食事を介して気軽に相談できる場を作ろうという趣旨で、一年前の年末年始に初めて私たち複数の生活困窮者支援団体の関係者が企画したものである。この時は、普段、ネットカフェに暮らしている若者や路上生活の高齢者など、各回数十人が集まり、料理研究家の枝元なほみさんが作ってくれた美味しい食事をみんなでいただいた。
それから1年。コロナ禍の影響で貧困が急拡大する中で開催された今回の「年越し大人食堂」には、元旦に270人、3日に318人と、前年の数倍にのぼる人が集まった。
会場には中高年の男性の姿に混じって、お子さん連れで来た人や若者、外国人の姿も目立っていた。話を聞くと、3人家族の全員が食べ物の確保に苦労をしており、各地の炊き出しをはしごして食料を集めている、という声もあった。
老若男女が食事を求めて列を作る光景は、飢餓レベルの貧困が広がり、私たちの社会の底が完全に抜けてしまっていることを意味していた。それは、これまで生活困窮者支援を27年間続けてきた私も見たことがない光景だった。
コロナ禍の影響で貧困が拡大する中で年末年始を迎えるにあたり、厚生労働省は各自治体に対して、通常、閉庁期間となる年末年始も福祉の窓口を開けておくことを依頼していた。
一部の区が窓口を開けてくれたおかげで、年越し大人食堂等、年末年始に各支援団体が開催した相談会では、現場からすぐに行政の窓口に行き、公的支援につなげるという対応が可能になった。
コロナ禍という特殊な状況とは言え、人々の命と生活を守るために、これらの自治体が積極的な対応をおこなったことは特筆すべきことである。こうした動きが来年度以降もぜひ広がってほしいと願っている。
だが、ここでもネックになったのは、相談者の中に生活保護の申請を忌避する人が多いということであった。
「生活保護だけは受けたくない。他に方法はないでしょうか」
昨年春以降、生活困窮者支援の現場で、この言葉を何度聞いたであろうか。
年末年始の活動でも、すでに住まいがなく、所持金が数十円、数百円しかないという状態の人から同じ言葉を聞かされる機会が多々あった。
この忌避感の背景を探るため、私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドでは、年末年始の各相談会に来ている人を対象に緊急のアンケート調査を実施した。
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