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体罰=私的制裁こそ犯罪である

教育委員会よ、頼む、働いてくれ

赤木智弘 フリーライター

 兵庫県の市立中学校で、昨年9月「柔道場のアイスキャンディーを無断で食べた」として、柔道部顧問の男が部員二人に柔道技をかけて、背骨を圧迫骨折させるなどの重軽傷を負わせた事件の初公判が行われた(「『アイス泥棒した』執拗な暴力、気絶後の生徒にも柔道技」朝日新聞デジタル2021年1月22日)。

 顧問は部員が気絶しても、ほおを叩いて起こして技をかけ続けた。副顧問もその場にいたが暴力行為を止めることはできなかったという。

 顧問は2013年に生徒の頭を殴ったり頭突きをしたりしたということで、県教委から訓告と減給処分を受けていた。にもかかわらず、顧問は2時間のアンガーマネジメント講習を受けたが、その後は仕事の都合などで続かなかったとのこと。

 この記事を最初に目にしたときには、つい笑ってしまった。

 というのも、体罰の問題なんて僕が子供の頃からずーっとやっているわけで、それが昨年の事件だから2020年の時点で、一切なんにも解決されていないことに、呆れて笑ってしまったのである。

拡大教員が傷害容疑で逮捕され、会見で謝罪する森恵実子・兵庫県宝塚市教育長(右から2人目)ら。教員は懲戒免職処、副顧問は減給10分の1(3カ月)の減給処分となった=2020年10月13日、宝塚市役所

「体罰」に真っ当に向き合ってこなかった学校教育

 この事件にはハッキリ言えば、学校教育がいかに「体罰」という悪癖に真っ当に向き合ってこなかったかが詰まっているといえる。

 まず、顧問は過去に教育委員会から訓告を受けている。つまり、生徒に対する暴力癖があることは分かっていたのに「柔道部の顧問」という、ともすれば暴力につながりやすい立場に置いていることがおかしい。

 柔道というのは性質として、他者とのボディコンタクトを必然とする競技である。普段から当たり前にボディコンタクトの上で「指導」をしている人間が、怒りで普段よりも自制心を失ったときにどうなるのか。その答えが今回の事件である。

 普段はボディコンタクトをしていない人であれば、たとえ相手に暴力的な衝動を抱いても「怒鳴る」で済むはずのことが、ボディコンタクトに慣れている人であればあるほど、怒りを身体にぶつける直接的な「暴力」に至りやすいのではないかと、僕は考えている。

 また、暴力の前歴がある人間が、職務の遂行のために必要なアンガーマネジメント講習を続けていないというのもおかしい。ちゃんと仕事として継続的な講習受講を学校側が義務づければ「仕事の都合で講習が受けられない」ということもないはずなのに、教育委員会や学校はそれすらやっていないのである。

 あと、副顧問はその場にいたのに一体何をしていたのか。生徒が暴行に遭っているシーンを笑って眺めてでもいたのだろうか? 教師がお互いに身内意識を持って、他の教師の暴力を止めることすらできない。こんな環境下では安心して子供たちは学ぶことはできないだろう。この副顧問にもしっかりとした処罰と、教師としての役割を捉え直すための再教育を行ってもらいたい。

 さらに極めつけが、教育委員会が暴力行為があった当日にそれを把握しながら、警察に通報しなかったということだ。もし保護者が被害届を出さなければ問題は握りつぶされていたことだろう。

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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