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トランプの悪夢から急速に覚めた米国――議事堂襲撃事件が人々を正気にした

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 1月20日、ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領が正式に就任した。1月6日に合衆国連邦議会議事堂を襲撃したトランプ支持者たちのような暴徒も現れず、式典は最後まで平和に終了した。

 当初から指摘されてきたように、バイデン大統領は華やかなスター性も、カリスマ性もない。だが就任式からわずか数日の間に、大統領としての実行力を見せつけた。

 就任して3日の間に、バイデン大統領は30項目におよぶ大統領令に署名した。パリ協定への復帰、WHO(世界保健機関)脱退の撤回などは、日本でも大きく報じられている。だが米国内でより注目されているのは、バイデン大統領が新型コロナウイルスの対応を「戦時下」の緊急事態と宣言して、1兆9000ドル(約200兆円)規模の景気対策予算案を出したことである。

 米国内ではこれまで新型コロナウイルスで亡くなった犠牲者は、40万人を超した。2月の末までに50万人に達するだろうと言われている。ここで大統領が「戦時下」緊急宣言を発動しなければ、一体いつするのか、という事態なのは間違いない。

大統領就任式で演説するバイデン新大統領=2021年1月20日午前、ワシントン、ランハム裕子撮影2021012拡大大統領就任式で演説するバイデン新大統領=2021年1月20日、撮影・ランハム裕子

 バイデン大統領がこれまで署名した大統領令には、以下のようなことが含まれる。

• ワクチン接種、検査設備、そして防御マスクなど必要物資の供給のスピード化
• FEMA(合衆国緊急事態管理庁)の援助によるワクチン供給所の設置
• これまで州が負担してきた州兵と緊急物資予算に対するFEMAによる補償の増額
• パンデミックで食料が買えないなど生活が困窮している人々への緊急援助
• 連邦政府の施設、および空港と公共交通機関の中でのマスク着用の義務付け

 次々と打ち出される対策案を見ながら感動した筆者自身、どれほどこの4年間でトランプ政権に精神的なダメージを受けていたのか、改めて実感した。

 バイデン大統領の大統領令は、アメリカのパンデミックの現状を見れば、先進国の対応としてごく当たり前のことばかりだ。その当たり前のことをトランプ前大統領がどれほど否定し、国家元首としての任務をネグレクトしてきたのか、しみじみと考えさせられることになったのだ。

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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