人生で初めて、ストリップ劇場に行った。今まで「性が汚らわしい」と、なんで思っていたのか……。偏見まみれだったと猛省した。
踊り子さんが、めっちゃくちゃかっこよかった。小道具や衣装、ダンス音楽にこだわり、普通に芸人として、劇場に立つ自分と重なった。綺麗だし、女性のお客さんが多いのも納得。しかし、今、ストリップ劇場は、全国的に相次いで潰れているという。一体なぜか。
ストリップ劇場に感謝状? 違和感だらけの空間

「ストリップ A級小倉」の看板=北九州市小倉北区
私が訪れたのは、九州で唯一のストリップ劇場「A級小倉劇場」だ。
経営者の木村恵子さん(69)に、お話をお伺いすることができた。40年以上、ストリップ劇場を経営してきたが、コロナで経営は悪化した。売り上げは前年の半分以下に陥ったという。
入り口から劇場まで続く階段を上りながら、さっそく驚いた。踊り子さんのポスターに混じり、感謝状がズラーと並べられていたのだ。
なぜストリップ劇場にこんな立派な賞状があるんだろう。よく見ると、社会福祉協議会と書いてある。今まで、木村さんは稼ぎの一部を社会福祉協議会に寄付してきたから、寄付先から感謝状がたくさん送られてくるという。
「社会をよくするためにやってきた。儲けのためだけにやっていないから。みんなの幸せのためですよ」。純粋な瞳だ。誇りをもって仕事にとりくんできたのだろう。「かっこいいですね」と私が言うと、「そんなの当たり前。置く場所がなくて処分したんだよ」と恥ずかしそうに話してくださった。
たくさんあるように見えるが、これでも飾りきれないのか。木村さんの思いと、感謝されてきた歴史の厚みを感じた。

「A級小倉劇場」に掲げられていた、社会福祉協議会からの感謝状=北九州市小倉北区
「もう税金を納めたくない」 給付金の対象から外されて
これだけ地元に貢献してきた木村さんは、「もう税金を納めたくない」と正直な気持ちを話してくださった。
コロナで経済的打撃を受けた中小企業に最大200万円、個人事業者などには最大100万円を給付する持続化給付金は、なぜかその対象から性風俗業が除外された。政府は「国民の理解が得られにくい」と説明した。木村さんも、持続化給付金は貰えなかった。「差別してほしくない。税金をずっと払ってきたのになぜ? もう払いたくなくなる」と心中を吐露する。
⽊村さんは 、 ⾜腰が悪いこともあり、 経営からの引退を考えている。お客さんから「まだ続けてほしい」という声も受け、コロナの状況を見て最終的には、閉館するかを判断するという。九州最後のストリップ劇場が今 、 岐路に⽴たされている 。
感謝状のほかにも、驚いたことがある。館内の消毒や入館者の検温を徹底し、客席では扇風機と空気清浄機をフル稼働させて換気にも努めていた。客席もソーシャルディスタンスをとり、1席間隔をあけて座っていたし、踊り子さんが替わるたびに、消毒も実施されていた。感染源になりやすく、クラスターがおこりやすい場所とは思えなかった。
木村さんは、「心が折れてしまった」という。「ここまでして」という気持ちが痛いほどよく分かった。