子どもの貧困、コロナで異次元の危機に~給付金が急務 両親いる世帯にも
「コロナで死ぬか 社会で死ぬか」かつてない窮状、誰ひとり取り残さぬ社会を
小河光治 公益財団法人「あすのば」代表理事
厳しくなるばかりのコロナ禍で、子ども・若者の貧困問題は、臨界点をとっくに超えている。政府が再度の緊急事態宣言を発出するに至り、以前から困窮している世帯はいっそう過酷な状況に追いやられ、貧困とは無縁だった世帯も家計急変などで一気に困窮に追い込まれる例が少なくない。
私は30年以上、遺児支援などを通して困難にあえぐ家庭と接してきたが、これほどまでに多くの切羽詰まった「助けて」の声を聴いたことはなかった。生活保護だけでは解決できない、命の危機が爆発的に進行している。

幼い子どもを抱きかかえながら、公的機関の緊急支援の食料をもらいに来た女性。夫と子ども3人の家族の収入は激減。くらしにおわれ、人に話を聞いてもらえる機会も持ちにくい日々だという=2020年12月

緊急事態宣言の出た宇都宮市内。人通りのまばらな商店街では店先に出されたテーブル席も空きが目立った=2021年1月
3月までの給付実行が不可欠。4党共同で法案提出
困窮する子育て世帯への、政府による給付金支給は急務だ。これからの年度末は、入学や新生活の準備で多額の費用が必要になり、厳しさが極まる時期になる。支援は年度内に、つまり来月(3月)までに届けなければ、子どもたちの未来が閉ざされかねない。
開会中の通常国会で、「子どもの貧困給付金法案」が提出された。民間の支援現場からの意見をふまえ、野党4党(立憲民主、共産、国民民主、社民)が共同で提出したものだ。私も、1月22日の法案提出後の4党の記者会見に、NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長らとともに同席した。
法案は、低所得の子育て世帯に対し、給付金を3月に支給することを目指す内容だ。緊急性とともに、今回、特に求められるのは、「両親がいる世帯」も給付対象に加えることである。
政府のコロナ禍対策では私たち支援団体や当時者、研究者らの粘り強い要望が実り、「ひとり親世帯」にはこれまで2回、「臨時特別給付金」が実現した(1回目は昨年6月成立の第2次補正予算で、2回目は12月に予備費で)。しかし、「両親がいる世帯」は対象とされず、政府の支援から抜け落ちていた。

「子どもの貧困給付金法案」を提出する野党議員=2021年1月22日、衆議院
苦しさ同じなのに公の支援及ばぬ「両親いる世帯」
「ひとり親世帯」では、2回の支給のおかげで何とか悲劇を免れ、年を越せたという例が少なくなかった。しかし、今年に入っても感染拡大はおさまらず、「コロナ切りで仕事を失い絶望している」といった声が次々に届くようになった。奈落の底に突き落とされている家庭が増えている。
苦しいのは、「両親がいる世帯」も同じだ。低所得で子どもをかかえる世帯は極めて厳しい生活を強いられ、病気や失業、別居など様々な理由で貧困に陥ってしまう。しかし、ひとり親世帯のような公的支援は皆無だ。わが国の全労働者の4割が非正規雇用である。コロナ禍以前は、両親ともに非正規雇用でも、なんとか共働きでやりくりをしていた子育て世帯が、失業や大幅な減収で追い詰められている。親が外国籍の世帯も増え続けており、くらしは容易ではない。