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 新型コロナ禍の中、自宅で過ごす時間がながくなっている。そんな中、多くの人が感じるのは自宅の安全性と快適性だ。建築の耐震教育に携わっている人間の一人として、ステイホームの基本である住宅の地震に対する安全性について考えてみる。

強・用・美と最低基準

拡大ウィトルウィウスの人体図 Shutterstock.com
 大学の建築教育で最初に学ぶのは、2000 年前のローマの建築家・ウィトルウィウスの言葉「強なくして用なし、用なくして美なし、美なくして建築ではない(firmitas, utilitas, venustas、強・用・美)」である。

 自然の脅威から命を守るために作り始めた建築が、使い勝手を考えるようになり、さらに権力者が現れると荘厳さや美を尊ぶようになった。優先すべきは命と生活を守るシェルターとしての役割だ。一方で、現代人は、小規模な災害を抑える技術を手にし、人工空間に居住するようになった。このため、自然に対する畏れを感じなくなり、経済性や効率、見栄えを優先する社会となった。

 多くの人は、便利で快適な格好いい家を安く作りたいと思っている。国は建築物の安全性を確保するように建築基準法で規定している。しかし、第1条に、「この法律は、建物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と書いてあるように、あくまでも最低基準であり万全の安全性を保障しているものではない。このため、自らの安全に対する意識を高めないと安全な家を手に入れることはできない。「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」が安全な家の基本である。

大切な土地選び

拡大震度6強の地震で道路が陥没し、傾いた住宅=2018年9月6日、札幌市

 「君子危うきに近寄らず」というが、危険は避けた方が良い。地震が起こると、強い揺れ、液状化、土砂崩れなどの地盤災害、津波、地震火災などが複合して襲ってくる。これらの危険度が高い場所は避けるのが基本である。それが無理なら、危険度に応じた安全な家を作る必要がある。

 地震規模が大きく、震源域に近く、地盤が軟弱であれば揺れは強い。強く揺れると、軟弱な地盤は液状化し、土砂崩れやがけ崩れが起きる。海の地震では、海辺を津波が襲い、海抜ゼロメートル地帯は堤防が壊れれば長期間浸水する。木造家屋密集地帯では、地震火災による延焼危険度が高い。斜面を切り盛りした場所や谷を埋めた所も危険である。活断層の近くも避けた方が良い。市町村が各種のハザードマップを作っているので、これらを確認して安全な場所を選びたい。昔の地図を調べるのも役に立つ。一般には平らな台地の上がお薦めだ。

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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