2021年02月10日
机の上の携帯電話が、テキストメール受信のバイブレーションを発した。
「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン接種を開始しました。あなたが接種対象のグループに入ったら、再度こちらから連絡します」
かかりつけの医師が所属するニューヨーク大学ランゴン病院から、そう連絡が入ったのは昨年(2020年)12月半ばのことだった。
米国のFDA(食品医薬品局)は12月11日、ファイザー社の、数日遅れてモデルナ社の新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可を出した。また2月4日、ジョンソン&ジョンソンが一度の接種のみで有効率およそ72%とされているワクチンの緊急使用許可をFDAに申請。これが承認されると3種目のワクチンとなる。
通常は10年以上かかることも珍しくないとされる新種のワクチン開発だが、世界的なパンデミックに対応して世界各国の製薬会社が最新技術を駆使し、驚くほどのスピードで実現化した。
連邦政府から各州、市の自治体へと供給されているこのワクチンは、ニューヨークでは12月14日から、市内の病院、医療クリニックなどで接種が開始されている。現在は薬局や、駐車場などのスペースを使った臨時ワクチン接種施設も設置され、2月5日からはブロンクスのヤンキースタジアム、2月10日からはニューヨーク・メッツのスタジアム、シティ・フィールドも臨時施設の一つとなった。
2月初頭までにニューヨーク市内では、のべ97万人余りの接種が報告されている。もっともそのおよそ8割は、1回目の接種を終えて2回目のアポ待ちの人々である。現在供給されている2社のワクチンは、いずれも1回目の後、21日から42日以内(ファイザー)、または28日から42日以内(モデルナ)に2度目の接種が必要だという。2度目も終わった人は、97万人中まだ20万人ほどだ。
さて病院から連絡はきたものの、実際に筆者が接種対象のグループに含まれるようになるのは、また当分先の話である。
現在ニューヨークで接種対象になっているのは、以下のグループの人々だ。
65歳以上の高齢者/医師、歯科医、看護師、介護士、理学療法士、職員などを含む医療関係者/育児所、幼稚園、学校の教師、対面式の講義を行う大学講師など教育関係者/警察、救急車隊員などファーストレスポンダー/飛行機、電車、バスなど公共交通機関の乗務員/(障害者などの)グループホームの職員/条件に当てはまる葬儀店の従業員/刑務所、少年院等の看守/食料品店の店員/ホームレスシェルターの勤務スタッフ/ホームレスシェルターの滞在者
2月2日からは、これにレストラン従業員、タクシー、リムジン協会に所属する運転手が加えられた。
そして2月15日からは、既存疾患を抱えた人々が対象に入る。ガン、喘息の患者や心臓、肺、腎臓、肝臓などに疾患のある患者、妊婦、糖尿病、肥満、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性、免疫不全症、臓器移植などで免疫力が低下している人、精神疾患者、ダウンシンドロームの人々などが優先グループに含まれる。
自分が接種対象のグループに入ったら、オンラインや通話料無料のホットラインなどを通してまず1回目の接種を予約する仕組みだ。だが職種、住む場所やタイミングによっては、なかなか予約が取れないという声も聞く。
ワクチンは連邦政府が購入し(財源は税金)、国民に無料で提供されている。もっとも、アメリカ国籍を持っていなくても、条件のグループに当てはまる住民には無料で接種されている。
接種に際して必要なものは、年齢確認のための免許証など身分証明書、職業を証明する職場のID、あるいは上司からの手紙など。だが日本のマイナンバーに当てはまる社会保障番号や、滞在ビザの有無などの提示は必要とされていない。
ニューヨーク州のクオモ知事、およびニューヨークのデブラシオ市長は、ワクチン接種者の個人データは
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