机の上の携帯電話が、テキストメール受信のバイブレーションを発した。
「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン接種を開始しました。あなたが接種対象のグループに入ったら、再度こちらから連絡します」
かかりつけの医師が所属するニューヨーク大学ランゴン病院から、そう連絡が入ったのは昨年(2020年)12月半ばのことだった。
ヤンキースタジアムも臨時のワクチン接種施設に
米国のFDA(食品医薬品局)は12月11日、ファイザー社の、数日遅れてモデルナ社の新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可を出した。また2月4日、ジョンソン&ジョンソンが一度の接種のみで有効率およそ72%とされているワクチンの緊急使用許可をFDAに申請。これが承認されると3種目のワクチンとなる。
通常は10年以上かかることも珍しくないとされる新種のワクチン開発だが、世界的なパンデミックに対応して世界各国の製薬会社が最新技術を駆使し、驚くほどのスピードで実現化した。

ファイザー社の新型コロナワクチン=同社提供
連邦政府から各州、市の自治体へと供給されているこのワクチンは、ニューヨークでは12月14日から、市内の病院、医療クリニックなどで接種が開始されている。現在は薬局や、駐車場などのスペースを使った臨時ワクチン接種施設も設置され、2月5日からはブロンクスのヤンキースタジアム、2月10日からはニューヨーク・メッツのスタジアム、シティ・フィールドも臨時施設の一つとなった。
2月初頭までにニューヨーク市内では、のべ97万人余りの接種が報告されている。もっともそのおよそ8割は、1回目の接種を終えて2回目のアポ待ちの人々である。現在供給されている2社のワクチンは、いずれも1回目の後、21日から42日以内(ファイザー)、または28日から42日以内(モデルナ)に2度目の接種が必要だという。2度目も終わった人は、97万人中まだ20万人ほどだ。