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【44】東日本大震災から10年、その時に起きたことを思い出す

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

長周期地震動による高層ビルの揺れ

 また東北地方太平洋沖地震では、震源域が南北500kmにも及び、断層が大きくずれたため、長い周期の揺れが長時間にわたって放出された。

 長周期の揺れは、波長が長いので減衰しにくく、遠くまで伝わる。我が国の大都市は、大規模堆積平野に立地しており、柔らかい地盤が数百~数千メートルの厚さで堆積している。こういった地盤は、長周期の揺れを増幅し、関東平野は8秒前後、大阪平野は5~6秒、濃尾平野は3秒程度で揺れやすい。堆積平野は盆地形状をしており、盆地内で地震波が反射屈折するために揺れが長時間続く。

 こうした揺れが苦手なのが、低減衰長周期構造物の高層ビルや石油タンクのスロッシングである。建物はそれぞれ揺れやすい周期があり、高層の建物ほど長周期で揺れる。石油タンクの中の液体もタンクが大きいほど長周期で揺れる。長周期で揺れやすい大都市に、長周期の揺れに弱い高層ビルや石油タンクが多くあるというのは皮肉である。

 筆者は、東北地方太平洋沖地震のとき、東京・青山にある23階建ての高層ビルの15階で、長周期地震動による高層ビルの揺れについて建築構造技術者向けに講義をしていた。受講者から指摘されて揺れに気づいた。最初は小さな揺れだったが、徐々に大きくなり、恐怖を感じるようになった。揺れは10分くらい続い

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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