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東京五輪は誰も「やめる」と言えないチキンレース~沈黙する関係者・メディア

背景にアスリートや国民そっちのけの自己保身。問われるメディアの姿勢

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

「五輪完遂」体制に組み込まれるメディア

 五輪開催の可否はIOCに決定権があるが、そもそもIOCに資金力はなく、「雇われママ」のようなバッハ会長がリーダーシップをとるとは思えない。とどのつまりは大口スポンサーの意向が働く。いまの五輪は、米国のテレビ局、具体的にはNBCテレビが支払う莫大な放映権料と、米国の世界的な企業が出すスポンサー料に支配されている。

 後藤逸郎著『オリンピック・マネー』によると、2013年~16年のIOCの総収入は57億ドル(約6000億円)で、うち約70%が放映権料だ。このため、五輪の開催時期も競技時間帯も、万事がNBCテレビの都合で決まる。本来は気候のいい春か秋の開催がいいのだが、夏の高温多湿のなかでアスリートが競技を強いられるのはそのためだ。

拡大昨秋来日し国立競技場を視察したIOCのバッハ会長=2020年11月17日、東京都新宿区

 マスメディアはこのような商業化五輪に対し、小さな疑問を呈することはあるが、基本的に追認し、国威発揚といえるメダル争奪戦に紙面や放送枠を裂いてきた。今回のコロナ禍の五輪についても、報道は、「五輪完遂」体制に組み込まれ、五輪再延期・中止を唱えようとはしない。朝日や読売新聞などの大手メディアは、東京五輪オフィシャルパートナーで、マスメディアもチキンレースをしているかのようだ。

 “大本営発表”を垂れ流すだけが、報道のありようではない。戦前の1940年、神武紀元(皇紀)2600年にあたる年に予定された東京五輪の光景がよみがえるかのようだ。戦争で中止になったが、当時、主流メディアであった新聞、雑誌は国家総動員体制のもと、国威発揚に邁進した。

 五輪報道をめぐる構図は、現代も戦前も変わらないということか。

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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