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Fridays for futureに対する弾圧に抗議します(上)

国家と資本は、社会変革の運動を押しつぶすのか

田中駿介 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

 ついに、Fridays for futureへの弾圧が始まった。

 Fridays for future(未来のための金曜日、以下フライデーズ運動と記す)とは、若者たちを中心に地球温暖化を食い止めるために行動を迫る運動である。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの学校ストライキを契機として、世界各地に広まった。日本も例外ではない。

デモ行進の出発前、プラカードを掲げて気候危機を訴える参加者たち=2019年9月20日、東京都渋谷区デモ行進の出発前、プラカードを掲げて気候危機を訴える参加者たち=2019年9月20日、東京都渋谷区

「2行」の編集で逮捕・起訴

 報道によると、インドにおけるフライデーズ運動の創設者の一人である、ディシャ・ラヴィさんが「扇動罪」の疑いで逮捕された。2月下旬、彼女はバンガロールで母親と共有している自宅で逮捕され、デリーに飛行機で送られ、弁護士なしでデリー警察に拘留され、扇動と犯罪陰謀の罪で起訴された(注1)

 弾圧の口実になったのは、「農業改革法」に抗議する農家を支援するための資料作成への関与だという。「農業改革法」とは、インド国内の農家を保護するための農作物の価格や在庫、売買に関するルールを変更することが目的とされる。新法によって価格保証が危険にさらされ、多国籍バイオ企業からの搾取が深刻になることが懸念される。

 インディア・トゥデイの記事によれば、デリー警察は、グーグルがGoogleドキュメントに保存されていた情報を警察に共有したあと、ラヴィさんを逮捕したことを確認した。

 デリー警察がグーグルから入手したのは、「ツールキット」に関するものだった。活動家たちはこれを通じて、扇動している農民を支援するための抗議行動について調整していたとされる。その詳細は、かの有名な環境活動家のグレタ・トゥンベリさんによってツイートされていた。その後、ツイートは削除された(注2)

(筆者訳)

 英紙・ガーディアンの報道によると、ラヴィさんはたった2行しか「ツールキット」の編集に関わらなかったと法廷で証言したという。

第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で演説する環境活動家のグレタ・トゥンベリさん=2019年12月11日、スペイン・マドリード第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で演説する環境活動家のグレタ・トゥンベリさん=2019年12月11日、スペイン・マドリード

「植民地」で試され、世界に広がった統治技術

 読者の中には、遠い「発展途上国」で起きた事案であり、リアリティを感じられないと考える方もいるだろう。

 もはやインターネットは、私たちの日常生活において欠かせないツールとなっている。コロナ禍において、大学の授業から会議、市民運動の集会にいたるまで、あらゆる場所でオンラインが活用されるようになってきた。こうした場でやりとりした内容が捜査機関にもたらされ、人々を管理し、弾圧するために利用されることを想像している人は、果たしてどれほどこの日本にいるだろうか。

 しかし、歴史を紐解くと、19世紀以降、インドを含む「植民地」は、統治技術の「実験場」になってきた。

 一例は、「指紋のデータベース化」

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