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福島からは「逃げる勇気」が必要だったか

『美味しんぼ』「福島の真実」編に見るデマ・偏見・差別

野口邦和 元日本大学准教授・元福島大学客員教授

そもそも鼻血が増えたとするデータはない

 福島第一原発事故後に何度も福島県に行った者としていえば、鼻血やひどい疲労感を体験したことはない。講演会場でそのような質問や相談をされたこともない。私が放射線健康リスク管理アドバイザーを務める福島県内の自治体の職員からも、そのような話を聞いたことはない。

 『美味しんぼ』の原作者が福島第一原発の敷地内をバスで視察後、福島から戻ってから鼻血を出したことや疲労感のあったことまで否定するつもりはないが、同じ症状の人が「大勢います」とは到底信じられない。それに大勢の県民が鼻血やひどい疲労感で苦しんでいるにも拘わらず、「言わないだけ」で黙っているとする描写もはなはだ疑問だ。これは福島県民を侮辱する以外の何物でもない。だからこそ漫画を読んだ多くの県民が批判や抗議を原作者やスピリッツ編集部に寄せたのである。

 そもそも福島第一原発事故後、鼻血が増えたというデータはない。

 鼻血は増えていないというデータならある。例えば相馬郡医師会が相馬地方4市町村(相馬市、南相馬市、新地町、飯舘村)の66医療機関を

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筆者

野口邦和

野口邦和(のぐち・くにかず) 元日本大学准教授・元福島大学客員教授

1952年千葉県生まれ。東京教育大学理学部化学科卒業、同大学院理学研究科修士課程修了。理学博士。専攻は放射化学、放射線防御学、環境放射線学。現在は本宮市放射線健康リスク管理アドバイザー、原水爆禁止世界大会運営委員会共同代表。著書に『山と空と放射線』『放射能事件ファイル』『放射能のはなし』、共著書に『放射線被曝の理科・社会』『しあわせになるための「福島差別」論』『福島第一原発事故10年の再検証』など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです